TeslaビジネスとTegraビジネスに力を注ぐNVIDIA
フアン氏はNVIDIAのGPUベースのHPCソリューション「Tesla」が、猛烈な勢いで、HPCの世界を席巻している事例も紹介した。
Teslaを搭載したIBM製HPC製品は、世界のスーパーコンピュータトップ500台のうち、196台を占め始め、The Supercomputing社のTesla搭載CRAYは世界のスーパーコンピュータトップ50台のうち10台を占めており、ロシアのスーパーコンピュータトップ50台の半分がTesla搭載機になったという。
「世界のスーパーコンピュータトップ500のうち、いまや84%のマシンにTeslaが搭載されている。トップ1000も同じく84%、トップ10000になれはもっとだろう」(フアン氏)
後ほど、フアン氏とのインタビュー記事を掲載する予定だが、NVIDIAは、PC向けGeForceビジネスを軽視してはいないものの、それだけではそれまで以上の成長の可能性がないことに気がついた。これがGeForce 8800 GTX(G80)の開発で大きくHPCよりのアーキテクチャにしたことのきっかけとなり、同社のGPUアーキテクチャのトップを"GeForceの父"と呼ばれたDavid Kirk博士から、スタンフォード大学のHPCの権威であるBill Dally氏にすげ替えることにも至った。
NVIDIAにとってHPC分野は重要な新規開拓市場であり、驚くべきことに、その蒔いた種が急速に実を結び始めている。そして、NVIDIAにとって3Dグラフィックスは、いまだ最重要テーマであることに変わりはないが、今やHPCもこれに優るとも劣らないほど重要な"飯のタネ"になりつつあるのだ。それほど時間の掛からないうちに、HPCのデファクトスタンダードの地位をNVIDIAがCUDAで掠め取るかも知れない。
さらにいうと、NVIDIAが次に目標を定めたのが組み込み向け分野だ。ここ最近のNVIDIAのSoC製品のTEGRAシリーズへの力の入れようは凄まじい。昨年のGTC 2009では「HPCオンリー」を掲げ、3Dグラフィックスの話を意識的に排除していたのに対し、今年は"Tegra押し"が強い。ただ、こちらは、競合が多く、NVIDIAらしさ(NVIDIA GPUの持つデータパラレルコンピューティングの優秀性)が生きにくいため、Tesla、CUDAほどの加速度で業界を席巻するほどには至っていない。ただ、組み込み向けは市場規模としては、当たればGeForce市場以上の大きなマーケットとなるため、NVIDIAがTegraにかける意気込みを緩めることは当面ないはずだ。
(トライゼット西川善司)