ダイナミックディスク/GPTをサポート
Acronis True Image Home 2010 Plus Pack導入における変化を述べる前に、「ダイナミックディスクとは」と疑問に思う方向けに概要を説明しよう。そもそもダイナミックディスクは、次世代のディスク管理法としてWindows 2000から実装された技術だ。ディスクの構成情報をHDD上に保存し、ボリュームサイズの変更時もコンピュータを再起動せずに済むため、サーバー運用しているコンピュータ向けのディスク構成である。
もう一つのメリットが、システムの一部に問題が生じても、被害を全体にまで広げないフォールトトレランスが有効になる点。具体的にはダイナミックディスクに変更した複数のディスクがある場合、特定のRAIDチップを搭載していない環境でも、ミラーリングを行うミラーボリューム(RAID1)、ブロック単位でのパリティ分散記録するRAID-5ボリューム(RAID5)の設定が可能になる。このほかにも複数のディスクを1台のディスクとして扱うスパンボリューム(JBOB)や、ストライピングボリューム(RAID0)も可能だ(図25)。
このように利便性の高いダイナミックディスクだが、Windows 7がリリースされた現在でもあまり普及していない。これはダイナミックディスクに変換したあとから、ベーシックディスクへのダウングレードができない(HDDを完全初期化すれば可能)点や、多くのディスク管理ツールがサポートしておらず、ダイナミックディスクの有利性をベーシックディスクが持つ汎用性を超えられないからだろう。
このような背景があるなかで、Acronis True Image Home 2010 Plus Packがダイナミックディスクをサポートしたのは、大きなアドバンテージとなる。これまで障害耐性のあるディスク構成を必要とするため、ダイナミックディスクを選択してきたユーザーも、柔軟なバックアップ・復元環境が手に入るというわけだ(図26)。
なお、Acronis True Image Home 2010 Plus Packでは、GPT(GUIDパーティションテーブル)のサポートも行われる。そもそもGPTとは、Intelが提唱する次世代のBIOS「EFI」の一機能であり、HDD上のパーティションテーブルを管理する規格だ。32ビット版Windows 7では、OSブートディスクに適用できないものの、64ビット版Windows Vista以降、EFI経由でGPTからOSを起動できるようになっている。Windows OSを対象とした一般的なコンピュータでは、EFIの普及はまだまだ時間がかかりそうだが、今後数年内には、Acronis True Image Home 2010 Plus PackがGPTをサポートする先見性を理解できるはずだ。
Windows PE環境からAcronis True Image Home 2010を起動
第1回で紹介した独自のプレインストール環境「Bart PE」と、Acronis True Image Home 2010の親和性は高く、多くのBart PE活用者は、Acronis True Image Home 2010を同環境のプラグインとして愛用してきた。だが、Windows VistaやWindows 7を使うユーザーは、Microsoft謹製のプレインストール環境であるWindows PEを強いられるため、必然的にPE環境からAcronis True Image Home 2010を使用できなくなる。
そこで必要となるのが、Acronis True Image Home 2010 Plus Packに用意された「Acronis WinPE ISOビルダ」。Windows PE環境を作成する「Windows自動インストールキット(AIK)」を用いて、自身を組み込んだWindows PEを作成するためのツールである。同ツールに用意されたWindows PE用Acronisプラグインは、Windows XP Professional SP2で使用するWindows PE 1.5、Windows Vista用のWindows PE 2.0、Windows Vista SP1用のWindows PE 2.1、そしてWindows 7用のWindows PE 3.0で動作するが、今回はWindows 7を前提に機能を検証することにした。
まずは、Windows 7用のWindows AIKをダウンロードし、コンピュータに導入しよう。この際.NET FrameworkやMSXMLの導入も可能だが、Windows 7では必要ない。また、インストールはウィザード形式で進むため、画面の指示に従って進めるだけだ(図27~34)。
図27 ダウンロードサイトにアクセスし、 |
<ダウンロード>ボタンをクリックしてWindows 7用AIKをダウンロードする |
図28 ダウンロードしたメディアを仮想CD/DVDドライブなどにマウントするか、DVD-Rに書き込んでCD/DVDドライブにメディアをセット。自動再生が始まったら「StartCD.exeの実行」をクリックする |
Windows AIKの導入を終えたら、さっそくWindows PEの作成を行おう。既にお使いの方はご存じのとおり、Windows PE 3.0は32ビット版64ビット版など各アーキテクチャをサポートしているが、Windows PE用Acronisプラグインは32ビット環境のみサポートしているので注意して欲しい。
本来Windows PEの作成は「Deploymentツールのコマンドプロンプト」を使用し、コマンドラインから操作するため、コンピュータ初心者が使いこなすにはハードルの高いツールだが、Acronis WinPE ISOビルダを用いることで、コマンドライン操作は作業フォルダの作成と必要ファイルのコピーを行う「Copype x86 C:\WinPE」を実行するだけでよい(図35~36)。
図35 <スタート>メニューから<すべてのプログラム>をクリックして開き、<Microsoft>→<Microsoft Windows AIK>→<Deploymentツールのコマンドプロンプト>とクリックする |
あとはAcronis WinPE ISOビルダを起動し、ウィザードの指示に従って進めれば、Windows PE 3.0とWindows PE用Acronisプラグインを組み合わせたISO形式ファイルの完成だ。なお、図39の画面でWIM形式(Windows Imaging Format)ファイルを選択するか、図40の画面で表示されるビルドモードで<WIMイメージにコンポーネントを追加する>を選択することで、独自にカスタマイズしたWIMファイルをベースにWindows PE用Acronisプラグインを埋め込むこともできる(図37~44)。
図37 <スタート>メニューから<すべてのプログラム>をクリックして開き、<Acronis>→<Plus Pack for Acronis True Image Home 2010>→<Acronis WinPE ISOビルダ>とクリックする |
図43 これでWIM形式ファイルに対する操作やアンマウント処理 |
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ISOイメージの作成などが行われる |
図44 完了を示すメッセージが表示されれば、ISOイメージファイルの作成完了となる。<OK>ボタンをクリックして、Acronis WinPE ISOビルダを終了させよう |
図45 さっそく作成したWindows PEからコンピュータを起動しよう。画面のようなメッセージが表示されたら、[スペース]キーなど任意のキーを押して、ISOイメージファイルからコンピュータを起動する |
完成したWindows PE 3.0環境は素の状態であるため、実用レベルに高めるには、ネットワークアダプタ用デバイスドライバの組み込みなどが必要となるだろう。ただし、Windows PE 3.0上からでも「DrvLoad:{INFファイル名}」と実行するだけでドライバを動的に読み込むことも可能なため、無理してWindows PE 3.0をカスタマイズしなくともよい。Windows PE 3.0に関する詳しい情報は、Windows AIKと一緒に展開される「Windows PEユーザーズ ガイド」を参照するといいだろう。
最後に
以上で、Acronis True Image Home 2010、および同Plus Packを用いたバックアップ環境の構築を終えるが、同製品には、パーティション単位のコピーする「ディスクのクローン作成」や、新規導入したHDDにホストドライブの内容をコピーする「新しいディスクの追加」など数多くの機能を備えている。今回は誌面の都合ですべての機能を紹介しきれなかったが、コンピュータのデータ保護やリスク管理を行うのであれば、多機能と柔軟性を誇るAcronis True Image Home 2010を用いた方が、確実に安全が高まるだろう。