「Oracle OpenWorld 2010」2日目となる20日(米国時間)のキーノートは総合ITベンダへと進むOracleの新しい姿を浮き彫りにするセッションになった。オープニングに元HPのCEOだったMark Hurd氏(Oracleプレジデント)が登壇し、長年のパートナーである富士通の豊木則行氏(執行役員常務)を最初のスピーカーとして紹介。後半は元Sun MicrosystemsのエグゼクティブだったJohn Fowler氏(Oracleシステムズ担当エグゼクティブバイスプレジデント)がOracleとSunの統合の成果と呼べる新製品群について語った。
Oracleのプレジデントとして初めて公の場に姿を見せたMark Hurd氏。Oracle移籍を巡ってHPが同氏を守秘義務違反で提訴した問題の影響が直前まで心配されたが、この日にHPとの和解成立が発表され、晴れてOracle OpenWorldのキーノートに登場した。
Hurd氏はまず20%の増益を果たした2011年度第1四半期(2010年6月 - 8月)決算を取り上げ、同じく良好だった2010年度の業績と合わせて、会場のパートナーや開発者に対して「これらの数字が意味するのは成長を支えていく投資能力だ」と語った。現時点でOracleは50の製品および産業分野で"#1"を獲得している。こうした結果をもたらした原動力として、過去5年でおよそ2倍に拡大した研究開発費を挙げた。今年度は40億ドル以上が研究開発に投じられる見通しだ。もちろん成果を確認できるのは数年先になるが、たとえば前日にLarry Ellison氏が発表したFusion Applicationsの開発は5年前に始まった。当時の研究開発費は19億ドルである。その倍以上に相当する今年度の研究開発投資は、5年後のOOWで今年を上回るサプライズを実現する種まきになる。こうした成長戦略を同氏は「革新への投資、勝ち抜くための投資」と表現した。
Hurd氏が最初に投資と研究開発に触れたのは重要な意義を持ちそうだ。Sun買収からおよそ1年間の比較的しずかな統合期間が続いていたところに、HPを短期間で再建させたHurd氏がやってきた。同氏の役割としてSun統合後の重複分野や余剰人員の整理が期待されているのは衆目の一致するところだ。だが、HPとOracleでは事情が大きく異なる。Sunの統合はコスト削減がすべてではない。むしろOracleに欠けていたピースを的確に埋めながら、新たなOracleを描き出す手腕が求められる。短期的な効率化の実現にHurd氏は適材だが、研究開発を含む中長期的な戦略でOracleにフィットするかは不透明だった。そうした懸念を払拭するほどではないものの、今回の同氏のあいさつはOracleエグゼクティブとしての適性をかいま見せるものだった。