公営競技の"オートレース"に美女レーサーが誕生する。茨城県内のオートレース選手養成所で14日に行われたオートレース第31期選手候補生の入所式に、男子候補生に混じって、ひときわ目立つ2人の女性がいた。18歳の佐藤摩弥(まや)と26歳の坂井宏朱(ひろみ)。彼女たちは9カ月に及ぶ厳しい訓練を受け、来年6月にデビューを果たす予定だ。なぜ、彼女たちがオートレーサーを志したのか、今、何を思うのか。
デビューすれば約半世紀ぶりに女子レーサー復活
オートレースは競馬、競輪、ボートレースに並ぶ公営競技の一つ。8人の選手が1周500mのオーバルコースを6~10周回し、着順を競う競技である。最高時速は約150km、コーナーは時速約90km。ハイスピードの状態で、体と体がぶつかり合いながら競り合うこともあり、まさに命懸けのスポーツだ。
現在、選手登録をしているのはすべて男性である。かつては女子レーサーが活躍していたものの、約半世紀前に姿を消しており、オートレース史の一コマを刻んだ伝説的な存在となっている。
そんななか、オートレースでは、第30期候補生から女性も対象にして選手の募集を再び開始。そのときは女子レーサー誕生には至らなかったが、今回の第31期候補生募集で佐藤、坂井が三次試験を通過、候補生として選手養成所に入所した。受験者総数986人、倍率約50倍の難関試験をくぐり抜けた2人は、教練を受け、来年6月に晴れて正式にオートレーサーとなる。
ずっとバイクに乗っていたい
佐藤摩弥(さとう まや):1992年5月16日生まれ。18歳。埼玉県出身。オートレース選手養成所への入所にあわせ、県立高校を中退。身長は150.5cm、体重49.4Kg(願書提出時データ)。趣味はファッション、好きな音楽はHIPHOP、R&Bなど。好きな食べ物はじゃがいも |
候補生の1人、佐藤摩弥は6歳の頃からバイクに親しんできた元モトクロスライダー。美少女ライダーとして注目を浴びて、TV出演したこともある。
戦歴はそのビジュアルに比例して相当のもの。2005年のKIDSモトクロス中学生クラス・レディースクラスともにチャンピオン、2008年、2009年の全日本モトクロス女子選手権シリーズランキングはともに7位といった実績を残している。
そんな彼女は、中学生のときに父親に連れられてオートレースの存在を知った。オートレーサーに転向したのは、ずっとバイクに乗っていたいという気持ちから。「モトクロスの女子選手は25歳くらいが年齢のピーク。選手生命の長いオートレースだと長くバイクに乗り続けられる」(佐藤)。
実際、オートレーサーは60歳をこえてなお、現役レーサーとしてバリバリと活躍する"鉄人"が何人もいる。オートレースであれば、職業ライダーとしてバイクに接していたいという彼女の夢は叶うだろう。
しかし、そのためには9カ月に及ぶ厳しい教練にたえなければならない。お試し期間ともいうべき2週間の仮入所でのトレーニングを終え、教練はこれからが本番。朝は6時15分起床、夜は22時に消灯。食事は5分ですませ、外出は許されず閉ざされた空間で修行生活を送る。
競争車のホイールを手にする佐藤(写真上段中央)。割り当てられた整備ブースで競争車のボルトナットの締め具合を確認する際も終始嬉しそうだった(写真上段右&写真下段左)。ちなみに競争車の車番は10番。「モトクロスでは7番をつけていたんですけどね」と佐藤 |
今の気持ちについて佐藤は「仮入所で、男性と同じメニューをこなすのがやっと。もっと、筋力・体力を鍛えなければならない」としきりに課題を口にするが、競争車を目前にすると、「早くバイクに乗りたい」(佐藤)と目を輝かせていたのも印象的。佐藤は「あまり選手のことはわからないんですが…」と前置きしつつ、森且行選手を目標に、すでに本物のオートレーサーに向けて彼女の気持ちはアクセル全開で前に動き出しているようだった。……つづきを読む