アップルのiPhone 4は、世界的な供給不足で品切れが続いているようだが、追加されたハードウェア上の新機能の中でも注目されているのがカメラ機能だ。一見すると平凡なスペックだが、数字だけでは分からないカメラとしての完成度の高さを実現している。
裏面照射型の500万画素CMOSで画素数競争に一石を投じる
iPhone 4には、本体背面と内側にそれぞれカメラが設置されている。デジカメとして使うのは基本的には外側のメインカメラだ。メインカメラは有効画素数500万画素のCMOSセンサーを採用している。日本の携帯電話では、すでに1,000万画素を超えるセンサーを搭載している機種もあり、単純に数字だけ見ると数年前のスペックではある。
ただ、iPhone 4の発表時に米AppleのSteve Jobs氏が「みんなピクセル数について語るのが好きだけど、高画質な写真を撮るにはどうするか? 」と言ったように、スペックにはない強みがiPhone 4のセンサーにはある。
それが裏面照射型のセンサーを採用した点だ。裏面照射型センサーは、国内ではソニーがデジカメ用に採用した「Exmor R」以降、一気に普及した。通常、カメラはレンズから入った光をセンサーの画素が受け取って画像に変換していくのだが、裏面照射型センサーは、単純に言えばこのセンサーをひっくり返し、センサーの裏側から光を受け取るという構造になっている。これによって、画素に入る光の量が増える、というのがメリットで、光の量が増えると、暗い場面でも低ノイズで明るい画像が撮影できる。原理的には昔からあるもので目新しくはないが、商品化されたのはつい最近という技術だ。
コンパクトデジカメ用の裏面照射型センサーは、ソニーのセンサーが主流だが、東芝やサムスン、OmniVisionといったメーカーも裏面照射型を実用化しており、iPhone 4に搭載されているのは、OmniVision辺りだと言われている。携帯カメラで裏面照射型センサーを搭載したのは、少なくとも台湾HTCのスマートフォン「HTC Evo 4G」の方が先だが、それでもまだ採用例は多くはない。
そもそもカメラの画質は、おおざっぱに言ってセンサー、レンズ、画像処理エンジンの3種類が決定する。単純にセンサーの画素数を増やしても、それに見合うレンズや画像処理エンジンが伴わなければ全体の画質は落ちる。画素数が増えると、画素1つ1つが受け取れる光の量が減るので、特に暗いシーンでの画質が落ちる。
逆に画素数が増えると、画像を構成する画素が小さく細かくなるので、細部の再現性は向上する。レンズと画像処理エンジンがしっかりしていれば画素数が増えるのはむしろいいことで、センサー自体の性能向上も加われば、画素が増えるほど全体の画質は上がる。
ただ、携帯カメラやコンパクトデジカメはレンズの性能がそれほどいいわけではないので、高画素のセンサーを積んでもそれほど意味があるとは思えない。それぐらいなら、画素数は抑えて、余裕を持って画像処理をしたほうが画質にとっては効果的である、というのがJobs氏の主張であり、それは理にかなっていると思う。