フジテレビの深夜アニメ枠として2005年よりスタートした"ノイタミナ"。2010年4月からは1時間枠に拡大されるなど、6年目に突入してますますの勢いを見せているが、7月8日からは、初の実写作品となるドラマ『もやしもん』が放送開始となる。
現在「イブニング」(講談社刊)にて連載中の『もやしもん』は、石川雅之氏が描く世界初の"菌マンガ"。菌が肉眼で見える主人公・沢木惣右衛門直保を中心に、個性的すぎるキャラクターとかわいらしい菌たちが農大を舞台に活躍する物語が大きな話題を呼び、第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第32回講談社漫画賞、平成20年度醤油文化賞を受賞したほか、2007年10月には"ノイタミナ"にてアニメ化もされた人気タイトルとなっている。
今回のTVドラマ化では、シリーズ監督を『トミカヒーロー レスキューファイアー』シリーズ監督の岩本晶氏が担当。シリーズ構成は、アニメ『もやしもん』も手掛けた高橋ナツコ氏、制作は白組が務める。放送を直前に控える今回は、シリーズ監督を務める岩本晶氏が語った、制作上のエピソードや作品の見どころなどを紹介しよう。
岩本晶監督が語るドラマ『もやしもん』
――岩本監督がドラマ『もやしもん』を引き受けることになった経緯を教えていただけますか?
「うちの会社(白組)で制作するということもあって、プロデューサーから企画が進んでいることは聞いていたんですよ。その中でオファーがあって、監督を引き受けることになったという感じですね」
――前作のアニメ版でも白組さんは制作を担当なさっていますが、その際、岩本監督はどのような関わり方をなさっていたのですか?
「そのときはプロデューサーに相談されたぐらいですね。ただ、『絶対にやったほうがいい』ということは強く言いました。」
――さて、今回の『もやしもん』は実写ドラマですが、アニメの枠で実写をやると聞いたときはいかがでしたか?
「チャンスだと思いましたね。これでいいものを作れば、今後もさらにいろいろな仕事ができるかもしれないので、このチャンスを逃す手はないという感じです」
――前作はアニメですが、今回はドラマということで、何か意識したことはありますか?
「実はアニメ版についてはあまり意識していないんですよ。意識しているのはアニメではなく、原作のコミックスですね。前作のアニメを観たときもかなり原作を意識して作っているなと感じたのですが、やはりオリジナルはあくまでも原作なわけですよ。前回はそれがアニメに派生しましたが、僕らが派生させるのは実写ですからね。なのでアニメについては特に意識せずに作っています」
――白組といえばやはりVFX技術ということで、今回は菌をCGで制作されているわけですが、そこにはどのような苦労がありましたか?
「僕のチームはもともとヒーローものをやっていたんですよ」
――「トミカヒーロー」シリーズですね
「そうです、そうです。それで、みんなメカが大好きで、それをカッコよくみせる方法などはすごく心得ているんですよ。でも、今回は可愛くみせないといけない。それに慣れるまでにちょっと時間がかかりました。可愛いものって大変だなって(笑)」
――カッコよく見せるのはお手のものですからね
「そうなんですよ。タイミングなんかも、ガーンってきたら、ビカーンって光って、ビシュワーみたいな(笑)。もうだいたい決まっているんですよね」
――それがガーンとも来なければピカーンとも光らないわけですからね
「ほのぼの系というか、ゆる系というか、本当にこれはどうやって見せればいいんだろうって、けっこう悩みましたね」
――やはり、いわゆる特撮ものとは作り方も変わってくるのですか?
「今回の『もやしもん』は、まずドラマが第一なんです。物語と人物の感情表現が第一にあって、菌たちはあくまでもそれを取り巻くものでしかないわけですよ。深夜枠なので、合成をバリバリに使って、奇をてらった挑戦的な作品に仕上げるという方法論もあったのですが、これはやはりストレートに登場人物の心情を描くべきドラマだと思ったので、作品全体としてはスタンダードな作りにしています」
――あくまでもスタンダードなドラマがメインで、菌はおまけといったところでしょうか?
「そうですね。そちらのほうがいいだろうという判断です。一作目から欲張って、奇をてらいすぎるのもどうかと思いますし。やはり最初はしっかりとしたものが作れるところを見せておきたかったというのもあります」