ブルゴーニュには、大都市のリヨンやディジョンを除けば高級ブティックが軒を連ねる大きな通りもなければ、アウトレットモールもない。ここを訪れる多くの観光客は、くどいようだがおいしいワインを飲みながら、おいしい料理に舌鼓を打ちに来るのである。であれば、レストランにホテルが併設、というのはいかがだろう。

パリジャンオーナーが開いたホテル&レストラン

ボーヌの街のほぼ中心にある「Via Mokis」は、スタイリッシュな空間の中でモダンな料理を供するレストランである。現代アートの絵画がまるでギャラリーのように店内のそこここに飾られ、オシャレなカフェごはん風のスタイルでありながら味は確かな一皿。そんなパリジャンオーナーの趣味思考が思いきり発揮されているホテルがこのレストランの上にある。

「Via Mokis」。店内はかなりモダンに洗練された雰囲気

5つある客室はすべて異なるテーマカラーで統一。例えば赤の部屋ならベッドのフレームやデスク、バスタブにいたるまでが赤く部屋のアクセントになっている。そして温泉リゾート地でもないのに、なんとスパまでも完備。観光で歩き疲れた時にはぜひここで癒されたい。

客室内。赤だったりブラックだったりするバスタブ。まさかボーヌにこのようなホテルがあったとは……

ワイナリーが経営するホテル併設レストラン

日本でも農家に泊まってその生活を覗いたり体験したいりするアグリツーリズムという言葉が浸透して久しいが、冒頭で触れた通り、フランスではエノツーリズムが定着の兆しを見せており、宿泊施設を持っているワイナリーも最近では少なくない。

宿泊施設併設の「Olivier Leflaive」。レストランではワインとのマリアージュコースも楽しめる

客室は様々なデザインタイプがある

ピュリニー・モンラッシェ村にある「Olivier Leflaive(オリヴィエ・ルフレーヴ)」もその1つ。ワイナリー見学はもちろん、テイスティングやランチ・ディナーができるレストランの上はホテルとなっており、個性溢れるデザインの客室が12。現在の当主は19代目のジュリア・ルフレーヴで、その叔母のキャロルが、17世紀に建てられた外装はそのままにしつつ内装デザインを担当した。クラシカルな客室からカラフルでポップなタイプまで、非常に幅広い。

ブルゴーニュ隋一の三ツ星レストランもホテル併設

そして最後はシャニィ村にあるレストラン「Lameloise(ラムロワーズ)」。ブルゴーニュ隋一のミシュラン三ツ星レストランとして名声は高い。実はこのレストランの上もホテルになっている。「Maison Lameloise(メゾン ラムロワーズ)」は、世界中の優れたクオリティーとホスピタリティを提供するホテルやレストランだけに加盟が認められるルレ・エ・シャトーに加盟していて、内装は前出とは趣が違い、きわめてクラシカル。天井が高く、床は絨毯、音楽ならクラシックが似合うゴージャスな空間で優雅なひとときを満喫できるだろう。

「Lameloise」。赤がアクセントとなった洗練された店内

「Maison Lameloise」の客室一例

いずれも共通しているのは、客室からレストランへ、レストランから客室へ、そのまま直行できることだ。ひとしきり観光した後、シャワーを浴びてさっぱりリフレッシュしてから食事に臨め、おいししくお腹を満たしてほろ酔い気分になったらそのまま部屋へ戻れるのである。きっと日本でこんな生活をしていたら翌朝後悔の嵐が吹くのだろうが、ここはワイン天国、たまにはこんな至福のひとときも許されるだろう。