金融危機からの需要回復は本物か? ネットブックブームはどこへ?

金融危機を受けて企業がIT投資を一気に抑制したことで業績に大打撃を受けたIntelだが、それだけに企業からの需要回復には非常に神経質になっている。特に先日発表した2010年第1四半期決算の結果がサーバやノートPC需要の回復を反映した好調なものだっただけに、需要動向について非常に強気な見方を持つようになっている。特に今回実施されたのは投資家向けのカンファレンスであり、非常に強気な見通しとともに、将来的な成長の可能性をアピールする面が強い。

まず2010年の業績としては、2009年に急減した企業のIT投資が復活し、延期していたプロジェクトが多数同年に実施されることで、急激なV字回復が可能になるだろうとしている。実際、2010年第1四半期の好業績は反動によるものが大きいと考えられ、通年でも比較的好ましい結果が出ることは容易に予想できる。

また将来的な成長の可能性として、新興国での潜在的な需要をIntelでは強調する。昨今のインターネット人口の増加と合わせ、動画などネットワーク帯域とパフォーマンスを要求するアプリケーションやサービスが増加しており、世界的にみてPCのような高機能デバイスの需要が高まるというのがIntelプレジデント兼CEOのPaul Otellini氏による主張だ。先進国で飽和しつつあるといわれるPC需要を越え、グラフのように1家に1台どころか何台も導入されるような100%以上の普及率(Penetration)を達成する状態になるかは微妙だが、前述のようにスマートフォンやデジタル家電が充実し、ユーザーデバイスが細分化するようになれば、可能性としてはゼロではないだろう。また普及率が100%に満たない新興国では、さらなる需要増を期待できるはずだ。

そのほか興味深いデータとして、企業規模が小さくなるほどサーバ普及率が低いというデータが挙げられる。これはビジネスチャンスであると同時に、システムを売り込むべく新たなソリューションを考えなければならないことを意味する。米Microsoftが中規模企業攻略を念頭に開発した「Microsoft Essential Business Server (EBS)」という製品が存在するが、需要を開拓することができずに今年夏での開発中止を発表している。既存ユーザーやEBSでターゲットとしていた市場のユーザーには今後クラウドで同種の機能を提供していくとしているが、この場合はクラウド活用増によるデータセンターへのシステム需要が期待できる。Intelにとって新たなビジネスチャンスになるだろう。

サーバ売上全体の76%がリプレイスまたは刷新用途だという。一方で2009年は金融危機の影響でリプレイスを延期していた企業が多く、2010年にはその反動がくる可能性が高いという

金額ベースでいえばx86サーバは売上全体の3分の2だが、台数ベースでは95%以上を確保している。Intelは高ROI (投資対効果)をセールスポイントに、従来の"Big Iron"と呼ばれるメインフレームやRISCプロセッサの市場を攻略していくという

Intelが示す、需要が反転する根拠の1つ。2009年を境に各国のGDPが戻しつつあり、コンシューマ以外の企業向け需要もV字回復が期待できるという

需要が反転する根拠その2。途上国での成長余地だ。いわゆる家庭でのPC普及率だが、途上国ほどチャンスが眠っているという

需要が反転する根拠その3。途上国を含む、インターネット人口の増加。特に広帯域、高性能を要求するビデオなどの需要が急増しており、これが成長ドライバーになるという

企業向け需要についてはこういうデータもある。同社によれば、中小企業ほどサーバの導入ケースが少なく、大企業と比べて大きなギャップがあるという。こうした企業への売り込みもさることながら、クラウドなど新しい提案を行うことで、需要を伸ばす余地が生まれるという