シンプルな操作で実現する保護機能
「WinProtector」の操作は、ロジックと相反して実にシンプル。メインウィンドウにある<開始>ボタンをクリックするだけで、対象ドライブ(通常はCドライブ)の保護が開始される。後は普段と同じようにコンピュータを使用すればよい。詳しくは後述するが、保護実行時は「WinProtector」に対する設定は制限されるため、一時ファイルの保存先などの設定を行なう場合は、一度保護を解除しなければならない(図02~06)。
図02 アーク情報システム製品ではおなじみの「Arkランチャー」。「WinProtector」に関する操作は<コンピュータの保護>セクションから行なう |
図03 <便利ツール>セクションでは、通常ホストドライブに保存するドキュメントなどのデータを別ドライブに移動する「データトランスファー」や、Windows OSの設定を容易に無効化する「ComfortDisk」などが用意されている |
また、使用時には一時ファイルに対する使用率を示すモニターウィンドウが表示されるが、「WinProtector」を使用する上でもっとも重要なポイントとなる。この一時ファイルの使用率は保護対象ドライブに対する書き込みが行なわれることで増加するが、リミットに達すると保護を継続できなくなるため、一時ファイルの適用/再起動/シャットダウンいずれか(既定値は再起動)が実行される。後者二項目を選択している場合、作業中のファイルは設定情報と同じく破棄されてしまうため、後述するリミッターや動作を適切なものに変更しておこう(図07~09)。
図07 一時ファイルの使用状況はモニターウィンドウで確認できる。 |
最小化ボタンをクリックすると、ウィンドウを小さくすることも可能だ |
図08 一時ファイルの使用率が限界に達すると、あらかじめ指定した動作を実行するが、初期状態では一時ファイルを破棄し、コンピュータの再起動が行なわれる。作業中のファイルも破棄されるため、注意が必要だ |
図09 コンピュータの再起動/シャットダウン実行時は「WinProtector」のダイアログが起動し、一時ファイルの適用/破棄を選択できる |
その各種設定を行なうのが「詳細設定」ダイアログ。保護対象となるドライブの取捨選択や一時ファイルの保存先を変更、一時ファイルの使用率に対する動作を設定できる。まず保護対象ドライブだが、今回の新バージョンからホストドライブ以外のボリュームも選択可能になったため、データドライブ上の画像ファイルやテキストファイルのヒューマンエラーによる破損を回避できるだろう。また、ドライブ文字を割り当てておけば、Windows 7のブート領域用ボリュームやリカバリー領域用ボリュームの保護も可能だ(図10~11)。
図10 「WinProtector」の設定を変更するには、保護状態を解除してから<詳細設定>ボタンをクリックする |
図11 「詳細設定」ダイアログで「WinProtector」に関する設定を行なう。「保護するドライブ」では、ドロップダウンリストからディスクを変更することで、保護対象となるボリュームの複数選択が可能だ |
一時ファイルに関する設定を行なう「一時ファイル」では、一時ファイルの保存先および、一時ファイルを管理するためのインデックス作成場所を選択する。一時ファイルはメモリ/HDD/メモリ+HDDの三種類、インデックスはシステムメモリ/OS管理外メモリ/システム+OS管理外メモリの三種類から選択可能だ。
ちなみにOS管理外メモリとは、文字どおりOSが管理できないメモリ領域を意味する。32ビット版Windows OSでは3.xGBを超えるメモリを使用できないが、この未使用領域を有効活用するのが前述の項目だ。ただし、チップセットの構成やBIOS設定状態など複雑な組み合わせが影響を及ぼすため「WinProtector」では、Intel 955以降のチップセット、もしくはAMD Opteron/Athlon64/Phenomなど8GB以上のメモリを利用できるCPUを搭載している環境を前提にしている。
また、OS管理外メモリ使用時は、Windows OSの休止状態やサスペンド機能などが使用できないというデメリットも。コンピュータに搭載したメモリをふんだんに活用するのであれば、64ビット版Windows 7を選択した方がスマートだろう(図12~14)。
図12 「一時ファイルの保存先」では、一時ファイルおよびインデックス情報の保存先をいくつかのパターンから選択可能。またコンピュータの要件が満たされていれば、OS管理外メモリも選択できる |
図13 「一時ファイル(ハードディスク)」では、一時ファイルの保存先としてHDDを選んだ場合に参照される。SSD使用時は別のHDDを選択しておこう |
そして一時ファイル容量が限界に達した際の動作を設定する「リミット時の動作」だが、「アラームの設定」セクションは一時ファイルの容量増加率に応じて行なう動作の選択、「動作の設定」セクションは設定値に達した際の動作を選択する。後者の選択肢として<再起動><シャットダウン><現在の状態をシステムに適用後、保護を継続する>の三項目が用意されているものの、実際には前者二項目しか選択できない。
「WinProtector」の主旨はユーザー操作を破棄し、Windows OSの状態を保護するものであり、コミット操作はその趣旨に反するからだ。ただし、ユーザーが行なった操作がリスクにつながらない場合、一時的に保護を解除して一時ファイルに保存された内容を保護対象ドライブに書き込み、再度ドライブ保護を行なうこともできる(図15)。
最後の「その他」は「WinProtector」の起動タイミングや、保護対象領域の選択が可能だ。「その他の保護設定」セクションにある<マスターブートレコード(MBR)を保護する>は、HDDの先頭セクタを保護する機能でウイルスなどによるブートストラップローダやパーティション情報の保護が目的。初期状態で無効になっている<ページングファイルを保護する><保護ドライブへの全ての書き込みを一時ファイルに書き込む>の二項目だが、これにはちょっとした理由がある。
そもそも保護対象ドライブに対する変更内容は「WinProtector」の一時ファイルに書き込まれるが、新規に作成するファイルやフォルダは、保護対象ドライブの空き領域に書き込まれる仕組みだ。後者は保護対象ドライブの空き領域も保護対象に含めるための設定である。前者は物理メモリ内容をファイルに待避するWindows OSの機能だが、通常は破棄されても困ることはないが、同じように保護対象に加えることで、セキュリティレベルの向上を期待できるが、その一方で一時ファイルの容量増加につながってしまうため、一時ファイル用領域を多めに取るなどの事前設定が必要だ。そのため、初期状態では両者とも無効になっているのだろう。どちらがよいという話ではないので、お使いのコンピュータ環境や目的に応じてお選び頂きたい(図16~17)。