景気が好転する雰囲気がない現在、中小企業のIT投資は特に消極的だ。ITに詳しい企業は逆に投資を増やすケースもあるが、総じてITへの投資は慎重という状況にある。従来のように新しい人材の雇用と情報システムの購入に積極的になれないなか、魅力的に映るのが月額費用のみで利用できるクラウドサービスだ。
そこで、筆者の担当パートでは、日本の中小企業という視点から、マイクロソフトが提供するクラウドサービスMicrosoft Online Servicesに触れていこう。なかでもExchange Onlineを中心テーマに据えて、いろいろと試していきたい。
執筆者紹介
後藤 大地(GOTO Daichi)
- ONGS 代表取締役
企業システムを開発するエンジニアとして活躍するかたわら、FreeBSDのコミッタも務めており、同OSの開発に深く関わる。FreeBSDの国際イベントに毎年参加しているほか、国内で開催するFreeBSDカンファレンスに関しては開催者の立場で携わっている。マイコミジャーナルには、オープンソースの話題を中心に、ニュースや解説記事を多数寄稿している。
慣れ親しんだユーザーエクスペリエンスが最大の魅力
さて、Microsoft Online Servicesに触れる前に、まずは「なぜMicrosoft Online Servicesなのか」という"動機"の部分に簡単に触れておこう。
ITに詳しくない日本の企業がクラウドサービスを導入する場合、重視するのは以下のような項目ではなかろうか。
- ユーザーエクスペリエンスがこれまでとそれほど変わらないこと。従来と同じ方法や同じスキーマで作業したい
- すべて日本語で提供されていること。ラベルやメッセージに英語が出てくると読まないで閉じる人が多いため
- サポートベンダーがいること。特に電話対応ができることが重要。もちろん、すべて日本語でやりとりでき、日本の商業慣例に則った対応をしてもらえることが前提
特に、提供されているサービスの内容が似ていたり、価格面で折り合いがつかなかったりする場合などは、こうした要素が意思決定に大きく影響するようだ。
そこで登場してくるのが、マイクロソフトが提供しているMicrosoft Online Servicesだ。
ほかの代表的なサービスとしてはGoogle Appsとセールスフォースなどがあるが、こうした競合サービスとの最大の違いは、やはりユーザーエクスペリエンス。WindowsやOffice製品などで日本企業に馴染み深いマイクロソフトのインタフェースがそのまま利用できるという点は大きい。
中小企業で特に必要とされるITとしては、メールなどのコミュニケーションツール、スケジューラ、コンタクトリスト、データを共有するためのファイル共有機能といったところが挙げられる。Microsoft Online Servicesではこうした機能がすべて提供されている。
気になる価格だが、Microsoft Online Services 価格表に掲載されているように、使いたいサービスのみに絞って使うことも、まとめてすべて使うこともできる。もちろん、初期投資は必要ない。月額利用料が発生するだけだ。
たとえばオンラインでメールだけ使えればいいという場合なら1ユーザあたりDeskless - Exchagne Onlineで209円/月。デスクトップとの同期とSharePoint Onlineなどほかの3つのすべてのサービスも使えるセット版で1ユーザー1,044円/月となっている。中小企業でも十分に手の届くサービスと言えるだろう。