――絵柄もかなり特徴的ですが、それも最初からの構想ですか?
「最初から和風でいこうとは思っていました。舞台が京都なので、ちょっとノスタルジックな感じを出したかったんですよ。中村さんの絵も白黒で描かれていて、そこに着彩していく感じだったのですが、やはり京都を描くのに、ノスタルジックな感じを出すには白黒がいいかなと。版画や浮世絵っぽい感じといいますか、白黒マンガにちょっと色が付いたようなイメージで、基本的なところができればいいなと思っていました」
――そんな中でも色はかなりパステル調になっていたりしてメリハリがついていますよね
「特に地味にしたいと思ったわけでもなかったんですよ。主人公が頭の中で考えているイメージには、もっといろいろな色がついているんだろうなということで、そのあたりの色はけっこう明るい感じになっていますね」
――映像には実写を加工したものも入っていますよね
「実際の京都が舞台で、実際にある場所ですから、それなら丹念に描き込んだ絵を使うよりも、写真のほうがわかりやすいだろうということで、コラージュ的に実写を使っています。ただ、ずっと実写でみせるわけではなく、アニメの絵の間に挟まる感じになるので、違和感が少しありつつも、なんとなく観られるぐらいに収まっていると思います」
――実際の京都を描くにあたって、ロケハンなどもかなりやっているのですか?
「みんなで一緒にというわけではないのですが、私もトータル1カ月ぐらい京都に滞在しました。日常風景が見たかったので、取材と言うよりも、生活をしに行ったという感じですね」
――風景の見せ方にこだわりなどはありますか?
「小説に出てくる風景で、意味のあるところはちゃんと出していこうと。あとは、自分が実際に行ってみて面白かった場所ですね。たとえば『デルタ』って不思議な感じなんですよ。下鴨神社というのがそんなに由緒のある神社だとは知らなかったのですが、たしかに川が集まって一本になっているところには何かありそうな気がしますし。あと、意外と地元の人は興味がないところでも、自分が見て面白かったところは入れていきたいなと。五山の送り火やインクラインも面白かったですし、縁切寺なんかも興味深かったですね」
――舞台は京都ですが、言葉は関西弁ではないですよね
「原作がそうなんですけど、京都人ではない人が、学生時代を京都で過ごしたという感じですね。アフレコで関西弁を少し入れてみたりもしたんですが、やはりちょっと違う気がしました。どちらかというと文学的な感じになっていると思います」
――関西弁ではないというだけでなく、言い回しも独特です
「お前は本当に現代人かって思うぐらいですよね(笑)。昭和や大正の文豪みたいな喋り方をしていますから。時代はまさに現代なんですよ。携帯電話なんか持っていなくて、みんな黒電話を使っているような雰囲気になっていますが、そういった時代錯誤的な雰囲気も出ればいいなと思っています」
――時代背景はあくまでも現代なんですよね
「原作を読むと、主人公は一応パソコンも持っていたりするのですが、でも壊れているっていう話になっていて、パソコンを使うようなシーンは一切出てこない。先ほども言いましたが、現代とはいえ、やはりノスタルジックな感じを出したかったので、映像やセリフだけでなく、音楽もクラシックを使ったりして、雰囲気を出しています」