――湯浅監督がTVシリーズで監督をなさるのは『ケモノヅメ』『カイバ』以来ということになりますが、今回もアニメーション制作はマッドハウスとのコンビです。監督としてはそのあたりにやりやすさみたいなものはありますか?

「マッドハウスでしかやったことがないのですが、やらせてくれるので、いいところだと思っています(笑)。『ケモノヅメ』や『カイバ』は、地上波での放送ではなかったですし、世間の経済状況もそれほど悪くなかったので、けっこう好きに作っていたんですよ。しかし今回、スタッフはそんなに変わっていないのに、状況はずいぶんと違っていて(笑)」

――『ケモノヅメ』や『カイバ』では原作や脚本も、すべて監督自身でなさっていましたが、今回のように監督として統括するというのはいかがですか?

「大変ですね、とにかく(笑)。地上波じゃないところで、自分の思うように作っていたのに対して、今度は地上波で、プラスたくさんの人と作ることになった。能力高い人ばかりなのですが、やはり自分とは違う人なので、いろいろと逆に大変になります。それを自分のものにしていくためには、かなりのエネルギーと時間が要りますね。今まではかなり簡単にやってきたんだなって思いました(笑)。ただやはり、他人の良いところを学んで、自分の作品に取り入れていきたいと思っているので、大変とばかりは言っていられません」

――今回は地上波で、しかも"ノイタミナ"と聞いたときの印象はいかがでしたか?

「視聴率のいい時間帯だと聞いていたので、『これはいいな』と思いました。特にプレッシャーになることはなかったですね。あまり考えないので(笑)」

――アニメを観る方には、原作を知っている方と知らない方がいると思いますが、作品作りにおいてそのあたりは意識していますか?

「原作をかなり尊重しているので、原作を読んでいる方でも満足していただけると思います。ただ、細かいことを言えば、スタッフの中でも、『四畳半神話大系』だけを読んでいる人と、それ以外の森見作品を読んでいる人では、印象がちがっていたりもするんですよ。たとえば『樋口さん』なんかはの別の作品にも出てきますので。なので、森見ファンの方には、あくまでも『四畳半神話大系』という世界で納得していただければと思っています。基本的にはやはり原作を読んだことがない人を中心に考えてはいるのですが、この独特のスタイル、世界観を知らない人に、この作品がどのような印象を与えるのか、そのあたりは楽しみでもあります。意外と、そういった人のほうが楽しめるかもしれません」

――まもなく放送開始となりますが、第一話、第二話ぐらいで、監督として注目してもらいたいポイントはありますか?

「以前も同じようなことを聞かれてちょっと迷ったんですけど(笑)、『四畳半神話大系』は、だんだんと面白くなってくると思うんですよ。尻上がりに面白くなってくる。ただ、一話をちゃんと観ていると、よりいっそう後半を楽しめるのではないかと思います」

――第―話だけだと説明されていない部分も多いですよね

「なぜ最後にああなるのか? よく考えたら、一話だけ観てもわからないんですよね。ただそれも、観ているうちにだんだんと謎が明らかになっていきます。そういう意味では、特に第一話の場合、どこに注目してくださいと言うよりも、とにかく素で観てほしいですね。ただ観ているだけでも面白いと思いますし、二話、三話と観ていくうちに、徐々にその面白さがわかってくるところもあると思います」

(次ページへ続く)