こうした話に真っ向から反論するのは米Adobe CTOのKevin Lynch氏だ。同氏はもともとAdobeが買収したMacromediaに在籍していた人物で、Adobeとの合併後に同社CTOに就任している。Flash技術の伝道者ともいうべき存在だ。Lynch氏が「最近発表された"魔法"のデバイスで、Flash Playerの存在が欠けていることに一部の方が驚かれたことだろう」という出だしで始まる文章では、Flashの起源とその現状について説明されている。
同氏によれば、Flashとはもともと15年前にペンコンピューティングのタブレットデバイス向けに開発されたが、当時からみてWeb技術という別の道を見つけることで、紆余曲折を経て現在まで唯一生き残った存在だという。ある意味で皮肉な話だ。当時はネットワーク帯域も少なく、そうしたデメリットをカバーすべくさまざまな機能強化を施すことで進化し、現在のWeb革命、特にビデオ方面での技術革新に大きな貢献を果たしてきた。その結果、上位Webサイトの85%がFlashコンテンツを含んでおり、Web上に存在するコンピュータの実に98%でFlashが動作しているという。カジュアルゲームや動画配信、アニメーションだけでなく、Nike、Hulu、BBC、MLBといったメジャーサイトもFlash技術によって構築されている。
しかも現在ではPC以外の分野、特にスマートフォンでのFlash技術拡大に力を入れており、最新のFlash Player 10.1では、"ある1つ"のベンダーを除くすべてのメジャーメーカーの製品をサポートしていると述べている。この"ある1つ"の指す企業は、もはや語るまでもないだろう。こうした取り組みもOpen Screen Projectの一環で、スマートフォンだけでなくTVから各種デバイスまで、幅広い環境をサポートすることになる。
Flash Playerは提供可能だが、Appleからの要請はなし
では、問題のApple製品ではどうだろう。「【レポート】米Adobe、iPadとFlash技術の関係について言及」で紹介したように、AdobeのFlash Pro CS5にはFlashのActionScriptで記述されたプロジェクトをiPhoneアプリとして書き出す機能が用意されており、「FickleBlox」や「Chroma Circuit」といったFlashアプリがApp Storeにすでに登録されている。iPadでももちろんこの機能は利用できるため、Flash開発者がiPadアプリを開発することは可能だ。またAdobeとしては、許可さえあればすぐにAppleデバイスのブラウザ上で動作するFlashを提供することが可能だが、残念ながら現時点でAppleからそうした要請はないという。