1月8日、Intelは32nmプロセスを使った待望のClarkdale(開発コードネーム)と、これに対応した新チップセットを公式に発表する。これに先立ち試用する機会に恵まれたので、そのレポートをお届けしたい。

ClarkdaleはCore 3/Core 5とPentium

■表1
Pentium G6950 Core i3-530 Core i3-540 Core i5-650 Core i5-660 Core i5-661 Core i5-670
ベースCPU周波数(GHz) 2.80 2.93 3.06 3.20 3.33 3.33 3.46
ターボ時CPU最大周波数(GHz) N/A 3.46 3.60 3.60 3.73
GPU動作周波数(MHz) 733 733 900 733
コア/スレッド数 2/2 2/4
L3キャッシュ 3MB 4MB
対応メモリ DDR3-1066 DDR3-1333
TDP 73 87 73
パッケージ LGA1156
価格 不明 $113 $133 $176 $196 $196 $284

まず表1に、今回発表されるCPUをまとめてみた。実は1月8日に発表される製品数は非常に多い。具体的には、

Mobile向けCore i7 5品種(i7-620M/ i7-620LM/ i7-620UM/ i7-640LM/ i7-640UM)
Desktop向けCore i5 4品種(i5-650/ i5-660/ i5-661/ i5-670)
Mobile向けCore i5 4品種(i5-430M/ i5-520M/ i5-520LM/ i5-540M)
Desktop向けCore i3 2品種(i3-530/ i3-540)
Mobile向けCore i3 2品種(i3-330M/ i3-350M)
Desktop向けChipset 3品種(H55/ H57/ Q57)
Mobile向けChipset 4品種(HM55/ HM57/ QM57/ QS57)
Mobile向けWireless 3品種(Advanced-N 6200/ Advanced-N + WiMAX 6250/ Ultimate-N 6300)

と合計27製品に上る。

Photo01: ここでは具体的な品番が明確にされていないが、別の資料でPentium G9650が2.8GHz駆動であることが示されている。

また1月8日のタイミングではまだ発表されないが、Desktop向けに現在のPentium Dual-Coreの後継となるPentium G6950が準備されていることがIntelの資料から明らかになっている(Photo01)。表1はこの28製品のうち、Desktop向けCPU7製品についてまとめたものである(ちなみにPentium Gのみ、まだ価格は明らかにされていない)。

既に報じられている通り、Clarkdaleコアは2コアのCPUとGPUをMCMでワンチップ化したものである。トランジスタ数及びダイサイズは、

CPU部 : 3億8,300万トランジスタ、81平方mm
GPU部 : 1億7,700万トランジスタ、114平方mm

と公表されている。

図1

さて、今回発表されたCPUの基本的な構造は図1に示す通りである(Photo02)。CPUコアは32nmで製造され、CPUコアは2つのみ。共有L3キャッシュは4MB(Pentium G6950のみ3MBだが、これは1MB分を無効にしている模様)で、他にQPI I/Fを持つ。QPIのスペックなどは今回公開されていないが、動作周波数は4.8GHzと思われる。必要とされる帯域から考えると40bit(つまり20bitのLinkを2本)かと思ったが、実際には30bit(20bitと10bitを各1本)かもしれない(この辺りは後ほど説明する)(Photo03)。

Photo02: Intelから公開されたCPU/GPUの内部構造

Photo03: これはCore i5-661をASUSTeK P7P55Dに装着してBIOS Setupで表示した画面。まぁこの4800MHzが正確か、は議論の余地はあるのだろうが、一応4.8GHzと仮定する。メモリコントローラがGPUの側にあるので、DDR3-1333×2chでフルにアクセスすると、1333×8×2≒20.8GB/secほどになる。QPIのバス幅は5/10/20bitがあり、実質4/8/16bit相当だが、4.8GHzが正しいとすれば実効転送幅はそれぞれ2.4/4.8/9.6GB/secとなり、これは全然間に合わない。ただし20bitのQPIを2本組み合わせれば19.2GB/secでか、なりいい線に行く。ちなみに20bit+10bitの場合、14.4GB/sec相当となる。

コアそのものは従来のNehalemベースと同じで32nmに移行したのが最大の違いとなるが、その他に新しくAES-NI(Advanced Encryption Standard New Instructions)を搭載したのが異なる点だ。これは名前の通りAESの暗号化/復号化を高速化する命令となる(Photo04)。

Photo04: 勿論これを利用するにはプログラム側にAES-NI命令への対応が必要になる。

一方GPU(正式名称はIntel HD Graphic)だが、ベースとなるのは同社がこれまで開発してきたGMAシリーズの流れを汲んだものでDirectX 10とWDDM 1.1に対応とIntelは説明している。従来G45/GM45に搭載されてきたコアとの差をまとめたのがPhoto05,06である。これとQPI、DDR3 I/F、PCIe I/F、DMI、FDIなどを組み合わせたのがGPU側の構造となる。このうちQPIはCPU側で既に説明した通りである。

Photo05: こちらはビデオの再生支援関連。

Photo06: こちらは3D関連。若干シェーダ(Intelの表記で言うEU)が増えた他、動作周波数も引き上げられている。

DDR3 I/Fについては、最大でDDR3-1333(Pentium G6950はDDR3-1066まで)を2chサポートする。各メモリch毎に2枚までDIMMを装着でき、最大で16GBとなる。

PCI Expressについては、Gen2のx16レーン分を搭載する。ただこれを1×16と使う以外に2×8としたDual GPU対応も可能だが、この構成を許すかどうかは(何故か)チップセット側に依存する。DMIは従来と同じで、2.5Gbps×4の構成である。

ここまでは、(内部にGPUを持つかどうかはともかく)LynnfieldベースのCore i5/i7と同じだが、今回追加されたのがFDI(Intel Flexible Display Interface)である。GPUをCPU側に内蔵したために、出力信号を追加する必要が出てきた。またDisplayPortならばともかく、Analog RGB出力ともなると出力電圧が足りないので、別にPHYを搭載する必要がある。こうしたものをPCH側に集約するために、GPUからの信号を受け取るための信号線を追加したわけだ。FDIは信号レート固定(2.7GHz)で、Differentialの4対の信号で構成される。ちなみにこのFDIが有効になるのは、Clarkdale+FDI対応チップセットの組み合わせの場合のみとなる。Lynnfield+FDI対応チップセット、あるいはClarkdale+P55の場合は、単に信号が無効になるだけだ。

ところでClarkdaleの世代からは、Intel Turbo Boost Technologyが若干拡張された。従来はCPUコア内で、負荷及び発熱量にゆとりがある場合、コアの動作周波数を段階的に引き上げるという仕組みだったが、ClarkdaleからはこれがGPUコアにも適用されるようになっている(Photo07,08)。ただし残念ながらこの機能が有効なのはMobile向けのCore i5/i7のみとされている。ちなみにDesktop向けでDiscrete Graphicsを使った場合でも、GPUコアは一定の電力を消費する。残念ながらIntel HD GraphicsにはPowerGateは使われていないそうで、このため使っていないからといって消費電力を0にすることは出来ないという話であった。

Photo07: Turbo Booost概念図。CPUコアが待機状態の場合、GPUコアを高速動作させることが可能。

Photo08: Mobileの場合、動作周波数が連続的に変化するとの事である。