レイトレーシング以外にもGPGPUでアクセラレーションされるものはある。
それはボリュームレンダリングだ。
表現したい形状がポリゴンで表現しづらいほどのディテール度を持ったオブジェクトや、あるいは内部構造の密度や透過率などが一様ではないオブジェクト表現などではボリュームレンダリングが有用になる。ボリュームレンダリングは医療分野などで主に活用されることが多いが、手軽に、ハイパフォーマンスが得られるのであれば新しい3Dグラフィックス表現手段として、それこそゲームグラフィックスへの採用もありえないことはない。実際Kirk氏によれば、導入を検討しているゲームスタジオがすでに存在しているのだという。
さらに、2DグラフィックスのアクセラレーションにもGPUは貢献できるとしている。
たとえばこれまであまり試みてこられなかったベクトルフォントやベクタグラフィックスのレンダリングもGPUをうまく活用すればアクセラレーションを効かせられるという。具体的には塗りつぶしとストロークの軌跡をステンシルバッファで記録してしまい、このステンシルの値を元にピクセルシェーダで塗りつぶしと型抜きを行う。GPUを使うことの嬉しい副作用は、ピクセルの書き込みの際にアンチエイリアスがなんの工夫もしないでハードウェア的に適用できてしまうという点。すなわち、ベクトルフォントやベクタグラフィックスの描画で面倒なエッジスムージングをGPUに完全に委託できてしまうのである。Kirk氏によれば、こうした種類のレンダリングもGPUで行った方がCPUで行うよりも圧倒的に高速になるとのこと。
また、12月23日より日本でも公開されるジャームズ・キャメロン監督のSF映画「VATAR」のCG制作を担当したWETA DIGITAL社は、これまでシーンの初期制作段階を作るための高速なレンダラと、高負荷な納品向けの最終レンダリングを実現するレンダラーが使い分けて制作に望んでいたそうだが、GPGPUベースのレンダラーの導入により、レンダリング品質の設定如何で速度重視にもクオリティ重視にも出来るため、その使い分けをしなくてもすむようになったそうだ。これは制作工程をシンプル化すると共に、コスト削減にもつながる、としている。