――いよいよ本日のお題です。いやぁ~超長い前振りでしたよね。濃い内容でしたからいいですけど。
増田「(みたび無視して)カシオの次のターゲットは女性なのです」
――満を持してですね。ウォッチもジュエリーもマーケットを支えているのは女性って言われてますよね。おっさんが自分の時計を買うにも、財布の紐は奥方が握ってるわけですし。
増田「女性向け市場に、いきなり入っていって失敗というケースは過去にあったんですよ(苦笑)。ただ、デザインとコストパフォーマンスが良いだけではなく機能性も含めて個性の明確な製品を投入すれば全世界が不況だと嘆く今こそチャンスだと思っています」
――でも女性向け時計市場に本格参入って、既に土屋アンナさんをアンバサダーに起用したBaby-Gがあるじゃないですか。
増田「現在はカジュアルなシリーズと、エレガントなシリーズの両方展開中なわけです。カジュアルでは、Baby-GやG-msが好調。一方、エレガントではOCEANUSのレディースラインがありますが、いまひとつ特徴が出し切れていません。
Baby-G、その姉モデルであるG-msは、女性のとってカワイイではなく、カッコイイものにしていきたい、そこにカシオ独特のクセがあるんです。いまの国内マーケットでは、スタンダードなものは厳しい。特徴があって楽しめるものがウケるわけです」
――なるほど。既存のカジュアルラインだけではなく、エレガントラインの強化が図られるというわけですね。
増田「そうです。G-SHOCKのイメージを活かしながら、女性向けでも機能とデザインを両立させたBaby-G、そしてオンタイムにも使えるスタイリッシュさをもたせたG-msでカジュアルラインを、そして女性向けニューブランドでエレガントラインを狙います。女性向けウォッチでの更なる成功こそが、G-SHOCKやOCEANUSにより男性市場で成功をおさめた弊社の最後の狙いでもあるんですよね」
――さっきからはぐらかされてますが、そのニューブランドって?
増田「それはまだ秘密です。本格始動してからのお楽しみに(笑)。じつは海外市場では既に展開していて、好感触を得ているんです」
――ここまできて内緒ですか! ……ともかく女性向けをおさえ、トータル勝ちを狙うと。
増田「そのためにも電波ソーラー機能を備えたクロノグラフで差別化を行い、そこに個性的で格好いいエレガントデザインを開発していきたいのです」
――いやぁー、本日はありがとうございました。女性マーケットの世界征服じゃなくて"完全制覇"、楽しみにしています。その暁には、ニューウォッチを一つよろしく……
増田「だからぁ、それは買いなさいってばぁ」
松田朗
世界でも数少ない、いや意外と多いかも知れないウォッチ・ジャーナリスト。知る人ゾ知っているかもしれないウォッチ・ウォッチャーである。伊豆の山奥に猫と共に暮らし、都内はもとよりスイスほか欧州にも足を延ばす
イラスト:YAGI