今回レビューするのはワンセグ付きのNV-U75Vだ。外部GPSアンテナは使用せず、本体のみで試用した。車は新車登録時から6年が経過したBMW 530i。いかに政府がエコカー減税による買い換えを促進しようと、筆者のサイフの軽さはいかんともしがたく、まだしばらくはつきあうつもりだ。その純正ナビは、DVDのフルナビ。今回使用したNV-U75Vと比較すると純正ナビが優っているのは、もはや画面のサイズぐらいだ。

記録可能なデータ容量は、純正DVDナビの4GBに対しNV-U75Vは2倍の8GB内蔵メモリーと、情報量ですでに完敗。また内蔵メモリーなのでアクセスも早く、DVDやHDDと比べて劣化によるエラーも発生しにくいだろう。

AV機能も純正のCDに対し、NV-U75Vはメモリースティックに音楽・写真・動画などのデータを入れておけば再生できる(ビデオ再生・ワンセグ視聴は、NV-U75Vをクレードルに装着して走行している時は音声のみとなる)。音楽はNV-U75Vのイヤホンジャックから純正ナビの外部入力へ繋いでやれば晴れてCDなどの管理から解放される。TVに至っては純正はアナログなので2011のその日以降はないことになってしまうが、NV-U75Vはワンセグでしかも録画も可能ときている。とまあ、フルナビとはいえ数年たてば、最新のPNDに対して優位な点はほとんどないのであった。

ドライバーの視線の高さに近く見やすい

パネルのコントラストが高く視認性も高い

さて、取りつけてまず気が付いたのは、NV-U75Vの視認性のよさだ。純正ナビの位置が低くて見にくいことが気になっていたが、NV-U75Vをダッシュボードへ取りつけてみると、ドライバーの視線の高さに近くてとても見やすい。また、パネルの発色やコントラストが高く、地図や表示のデザインも識別しやすいようによく考えられていて、明らかにNV-U75Vの方が見やすい。実は取り付け前にはPNDゆえのパネルの小さが気になっていたのだが、これはまったく杞憂だった。

ルートを外れたときのリルートも早い

サイバーショットとメモリースティックを共有してみた。そのままNV-U75Vで再生したりスライドショーで表示可能なようだ

では、ナビ機能はどうかというと、PNDの場合まず気になるのが自立航法の精度だ。今回の試用では、一般道、高速道路、都市高速道路などを走行したが、自車位置が怪しくなることはなかった。トンネル内、高架下、ビルの谷間などでは、かなり注意してチェックしたのだが、これらの場所でのカーブや分岐なども問題なく、POSITION plus GTによる自律航法の精度はかなりのものだと感じた。

ルートを外れたときのリルート計算も早い。初期状態でONになっていた事故多発場所の警告は、場所によっては頻繁に鳴るが、そうとわかれば警戒して走ることができ、未然に事故を防ぐことができるかもしれないのだから使わない手はない。旅行など、知らない土地ではなおさらだ。ちなみに警告頻度は設定で変更可能。

また、徒歩ナビも便利な機能だ。徒歩用の地図データを使って、地下道、駅内コンコース、歩道橋、公園など、歩行に適したルートをガイドしてくれる。電子コンパスにより、進行方向にあわせて自動的に地図が回転するので分かりやすい。おまかせ、屋根を優先、楽な道を優先、などから検索できるのも、なかなか気が利いている。

徒歩ナビモード

自立航法の精度については、そっけない感想となってしまったが、どこかで破綻してくれないことには字数も伸びようがない。そこで、思いついて後日電車に乗って試してみた。PNDの用途としては、カーナビとしての他に目的地や、あるいは電車やバス旅行に持ち出すということも多いだろう。その場合、乗車中の主な用途は音楽を聴いたりワンセグや動画を見たりなどだろう。というわけで、電車中でのワンセグ視聴と同時にGPSも使用してみた。

電車中でのワンセグ視聴。アンテナを伸ばしていない状態だが感度も良好だ

乗ったのはJR横須賀線北鎌倉駅から東京駅まで。運よくボックスシートの窓側に座ることができた。ワンセグの感度は良好で、筆者のワンセグ付き携帯では受信できない大船駅近辺でも問題なく受信できた。執筆中に画像を見て気が付いたのだが、ワンセグアンテナを伸ばし忘れている。

さて、電車でのGPS使用だが、自動車と違い、電車内、駅や建物の谷間、高架下など、GPS電波受信自体かなり厳しいと思われる。また、線路を走るため、POSITION plus GTによる自立航法の評価にはならない。いわば余興として試してみたのだが、所々でGPS電波が届かなくなるものの、ここでもなかなか頑張る。

下の画像は西大井駅方向から品川駅へ到着するところのものだが、おおむね線路上をトレースしている。品川駅に到着したところで、間近の道路へ自車位置が移動してしまったが、これはいよいよGPS電波が受信できなくなり、レール上から道路へと自車位置を補正した結果だろう。もともと道路を走行することを前提とした補正アルゴリズムなので、これは正しいといえるだろう。

左上から順に品川駅へと進行中。上右画像がちょっと迷ったように見えるが、おおむね線路上をトレースしている。電車の速度が徐々に落ちていくのが見て取れる。右下は品川駅で停車する直前。ここでやっと自車位置が線路上から最も近い道路にずれた

思いつきで試した電車でのナビ使用だが、使ってみるとこれが結構楽しいことに気が付いた。普段何気なく乗車していると、電車の速度など、あまり気にしていなかったことが分かるし、走行中の景色では分からない近隣の建物や設備などが分かる。また、何時何分にどのあたりを走行しているかが正確に分かるところなどは、鉄道ミステリー小説を想起させるものがある。こうしてみると、車と電車では、まったく違う思考でナビを使用していることが分かる。筆者は鉄道方面に明るくないのだが、勝手な想像では「徒歩モード」に加えて「鉄道モード」など、あってもいいのかもしれない。オプションで本体取り付け、もしくは吸盤タイプの外部GPSアンテナなどあるとなおよさそうだがどうだろう。

AV機能から鉄道ナビへと想定外の方向に話が進んでしまった。元に戻そう。ワンセグ視聴・録画以外に音楽、静止画、動画再生機能がある。静止画はJPG形式、音楽はMP3 / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WMA / リニアPCM / AAC / HE-AACなどの対応している。また、同社製BDレコーダー(BDZ-EX200/RX100/RX50)の「おでかけ転送」機能に対応している。静止画や音楽データは、メモリースティックへ直接あるいはNV-U75Vにメモリースティックを挿してUSBケーブルでPCへ接続してドラッグドロップすれば良く、いたって簡単だ。

アプリケーションメニュー

静止画の表示

ドライブにしろ旅行にしろ、カメラはまず持っていくだろう。というわけで、メモリースティックをサイバーショットと共用してみた。旅先でサイバーショットで撮影したら、宿泊先などでメモリースティックをNV-U75Vに挿して写真チェックしたりやスライドショーで再生することがでれば便利だ。普段筆者が使用しているサイバーショット DSC-H3で試したところでは問題なく再生できた。

音楽はスピーカーでの再生も可能だが、これは本来ガイド音声用なので、イヤホンなどを使用して聴いたほうがよいだろう。

さて、今回、NV-U75Vを使用して感じたのは、車中車外を問わずに使えるPNDの利便性の高さだ。ナビ、ワンセグ、音楽、写真、動画再生などの機能が、取り外して使用できる点は、プライベートはもちろん、車を利用する機会が多いビジネスマンにもメリットが大きいだろう。紅葉、クリスマス、正月と、ナビの活躍する季節。NV-U75Vは、新規購入はもちろん、筆者のように、古めのナビを使用している方にもお勧めできる製品だ。