寝台列車は高い?

寝台列車は同じ区間の航空運賃と比べると、ほぼ同額か少し安い。しかし航空運賃は事前割引料金で半額程度になるので、それに比べると割高に感じる。また、寝台料金に注目すれば、最低数千円という金額はホテル並みだが、ホテルのような広さやアメニティは期待できない。しかし、夜間に移動するメリットや楽しさを考えると、単純に金額だけでは比較できない。発想を転換すると、移動を楽しむという点で考えれば、航空機は1時間あたり1万円以上かかり、寝台列車は1時間あたり1,500円前後で、寝台列車のほうが断然安いのだ……屁理屈だけど。

寝台料金は割高感があるが、寝台列車は長距離運行なので、距離の割には特急料金や急行料金が割安になっている。それは、特急料金は601km以上、急行料金は201km以上で設定されている料金が上限になるからだ。

乗車券では、往復利用すれば必ず乗車券の往復割引が適用される。JRの場合、片道601km以上の乗車券を往復で買うと、往き、帰りの運賃はどちらも1割引になる。目的地のエリアを自由に乗り降りできる「周遊きっぷ」を利用すれば、往復の乗車券は2割引。北海道、四国、九州の周遊きっぷでは、片道が飛行機でも利用できるので、格安航空券と組み合わせても良い。

ほかに、企画乗車券のなかには、往復ルートについて昼間は特急料金が不要、夜間は2段式B寝台や1人用B寝台個室料金が不要という商品がある。「あけぼの」は、東京・横浜発の「青森・函館フリーきっぷ」、東京・横浜・大宮発の「秋田・大館フリーきっぷ」、東京発の「庄内フリーきっぷ」。「北陸」は東京発なら「北陸フリーきっぷ」、金沢発なら「首都圏往復フリーきっぷ」。「北斗星」は「ぐるり北海道フリーきっぷ」。はまなすでは「札幌・小樽フリーきっぷ」などがある。こうしたきっぷを活用すると割安感がある。

寝台特急北陸に乗れる「北陸フリーきっぷ」(筆者撮影)

人気の寝台列車のチケットを取るには?

「カシオペア」や「トワイライトエクスプレス」は人気が高く、寝台券を取りにくい。JRの指定券類は出発日の1カ月前の10時から「みどりの窓口」などで発売される。駅ごとの割り当てではなく、オンラインで管理されているので、混雑した駅に並ぶよりも、小さな駅の空いている窓口のほうが取りやすい。このときに取れなくても、キャンセル待ちを狙う手もある。こうした人気列車は、誰もが休む土日祝日やお盆の時期は難しい。むしろ、チケットが確保できたら休暇を取るくらいの心構えが必要だ。

乗車日を指定して確実にチケットを取るなら、旅行会社の団体旅行やパックツアーを検討しよう。団体乗車券は出発日の9カ月前から受け付けるので、旅行会社がチケットを先に確保できるのだ。寝台列車と航空券、現地宿泊をセットにしたツアーなので、希望通りの旅にできないこともある。しかし、希望と同じツアーがあるなら総額で割引があったり、特典があるのでおトクだ。

「ヒルネ」ってなに?

走行時間が長い一部の寝台列車では、列車本数の少ない一部の区間を昼間の特急として利用できる。「あけぼの」は羽後本荘 - 青森間、「日本海」は下りが東能代から、上りが秋田までだ。どちらも下り列車は「立席特急券」、上り列車は指定席特急券が発行される。「立席特急券」といっても、使用後の寝台に座っても良い。B寝台2段式のシートは大きいので、寝台券で使用中の乗客がスペースを譲ってくれることもある。日中に寝台を使うので、鉄道ファンからは「ヒルネ」と呼ばれている。

空いていれば快適なB寝台二段式(筆者撮影)

寝台列車を分類すると、「リソートタイプ」と「実用タイプ」に分けられる。「リゾートタイプ」はホテル並みのA寝台個室を供え、食堂車やロビーカーを連結するタイプ。上野と札幌を結ぶ「カシオペア」や「北斗星」、大阪と札幌を結ぶ「トワイライトエクスプレス」の3つが相当する。長時間走行し、出発時間が早く、到着時間が遅い。乗ること自体が目的となりうる滞在型の列車といってもいい。

これに対して「実用タイプ」はB寝台を中心とした編成で、夜遅めに出発し、朝早めに到着する。新幹線や航空機の最終便以降に出発し、ベッドで眠っている間に移動。始発便の前に到着できることがメリットだ。始発駅から終着駅まで乗り通さなくても、途中駅で乗車 / 下車すれば時間を有効に使える。時刻表などで途中停車駅を確認して使いこなしたい。