未来に期待を持たせるプロダクツ

最後にご紹介したいのは、ソフトウェア関連ではないものの「コンテンツとの連動で面白いサービスが期待できる」ハードウェアから。米国Fulton Innovation社のブースで注目を集めていたのが非接触型の充電システム「ECOUPLED」だ。

昨今非接触型の充電システムのリリースが相次ぐなか、「ECOUPLED」はミリワットからキロワットに至る電力供給を実現している優れもの。会場ではiPhoneやゲーム機のコントローラーへの充電をデモンストレーションしており、電磁誘導型の非接触充電システムのなかでは高い完成度を誇っていた。また、充電パッドの形状や受信コイルを携帯端末などの内部に仕込むことによって、外観のデザインを損なわないのは魅力的で、そのスマートな充電スタイルは筆者の心を強く惹き付けた。将来的にはノートPCなどへの電力供給の実用化に向け研究開発を行うというから注目していきたい。

テクノロジーソリューションゾーンで一際輝いていたのが米国Fulton社のブース

パッドと受信部にコイルが必要な電磁誘導型の非接触充電システム「ECOUPLED」。携帯などの端末内部に受信用のコイルが忍ばせられており、外見は非常に美しい。将来的に高電力の供給も視野に入れているという

お次は、"教授"こと坂本龍一氏や海外のトップアーティストからも信頼が厚いという次世代マルチタッチコントローラー「Lemur(レミュー)」の生みの親、stantum(旧JazzMutant)が出展していたマルチタッチデバイスだ。「Lemur」自体は2005年にリリースされていたのだがプロミュージシャン向けの製品であったために広く認知されてはいなかった。

しかし、指十本によるタッチインタフェースを実装しているという革新的技術力の高さはコアなユーザーからの注目を集めていた。奇しくもWindows 7でも「Windows タッチ」が実装されているが? と説明員に質問を投げ掛けたところ「WindowsタッチにしてもiPhoneにしても使う指は2本。弊社製品は設計当初から指十本でのコントロールを目指していましたから」との声。

単にタッチコントロールだけではなく、入力の強度(筆圧)も測定されておりまるで毛筆かのような描画が可能なソフトでのデモンストレーションも行われていた。複数の指を用いて直感的に操作可能なデバイス、ソフトウェアへの技術応用によって、タブレットPCに高性能なソフトウェアキーボードを実装したパソコン、といったノートPCやタブレットPCの次世代の姿を予感させてくれた。

stantumのブース。かつてのJazzMutantという社名の方がピンと来る方も多いかも知れない

指十本でのタッチインタフェースを実装した「Lemur(レミュー)」。音楽業界でもプロミュージシャンからの支持が厚い

Slate PCとラベルの貼られた端末は写真のようにソフトウェアキーボードを表示させ、実際のキーボードのように指で入力することが可能なほか、手書きによる文字入力をサポートしている。近未来のPCのカタチを想起させる

最後は帝人ファイバーブースで興味深いプロダクトを発見したのでご紹介したい。二次元通信媒体「CELL FORM」という製品がそれなのだが、ワイヤハーネスや信号ケーブルの代替としての活用が可能なプロダクトで、無線LANよりもセキュアな通信環境の実現、UHF帯のタグアンテナを用いたRFID、将来的にはワイヤレス給電を実現するという。

デモンストレーションでは、「CELL FORM」が備え付けられた商品ラックからタグの付いた商品を手に取るとその商品解説ビデオが隣のモニターに映し出される、というものが実演されていた。詳細な技術的解説はさておき、タグと「CELL FORM」の組み合わせによって特定の場所でしか得られないコンテンツの配信、空港などの商業施設でのセキュアな通信環境の確立、果てはカードゲームなどへの技術応用などが期待される。インフラをどのように活用するか、それを活かすコンテンツ開発によって、無限の可能性を秘めている製品だと言えるだろう。

帝人ファイバーのブースでは業界関係者も「難しいことに挑戦するねぇ」と唸るUHF帯のタグアンテナを用いたRFID技術に注目が集まっていた

こちらがUHF帯のタグアンテナを用いたRFIDのデモンストレーション。ラックの背面に配された「CELL FORM」によって商品が手に取られた場合にのみ右にあるディスプレイにその商品のプロモーションビデオが流れる、というものだ

このように商品をラックから取り出すと……

このようにプロモーションビデオが流れる。装置が単純なだけにコンテンツ次第で面白いサービスを提供できそうだ

こちらは「CELL FORM」を用いた無線LAN「LAN Sheet」。無線LANの電波をシートに封じ込めることによってよりセキュアな無線LAN環境を実現することができる。この商品は既にITOKIによってリリースされている

様々な技術を生かすも殺すもコンテンツ次第

ザッと駆け足で紹介してきたCEATEC JAPAN 2009のレポートだが、どんなに優れた技術や発想であっても利用者を念頭に置いたコンテンツが伴わなければその魅力は半減、いや光を失ってしまう可能性だってある。本稿で紹介してきたプロダクトは、どれも今後より一層光輝く可能性を秘めているものばかりだ。来年のCEATEC JAPANで、その進化した姿と再会できることを夢見て纏めとしたい。