本日、AMDは世界初となるDirectX 11対応のGPUであるRadeon HD 5870及びRadeon HD 5850を発表した。今回はこのうちRadeon HD 5870を試用する機会に恵まれたので、その性能を含めてレポートしたい。
コードネーム"Cypress"
既に今年9月2日、CEDEC 2009にて実働デモが行われたり、アメリカでは9月11日には1枚のGPUから最大6画面を表示可能とするEyefinityの発表が行われたり(Photo01)したから、その存在は半ば公開されていたようなものだが、公式にお披露目がやっと行われた事になる。ただ以前から、様々なサイトでベンチマークや写真のリークが行われていたあたり、製品展開が順調であることを伺わせる(これについては後述)。
Photo01: これは同日に日本で開催されたEyefinityのデモ。さすがに24枚(6枚×4セット)という訳にはいかず、Eyefinity対応カード1枚に、DELLの30inch液晶(2,560×1,600ピクセル)6枚を繋いで使った例。 |
さて、今回発表されたのはCypressというコード名で知られていた製品である。AMDは従来からSweet Spot Strategyと呼ばれる方法で製品展開を行っているが、DirectX 11世代においてもこれは継承される(Photo02)。今回発表されたコアがCypressであり、今年中にはこのCypressを2つ搭載したHemlockと、Cypressをスケールダウンしたメインストリーム向けのJuniperが予定されており、更に来年にはバリュー向けにRedwood/Cedarというコアが予定される。
Photo02: Radeon HD 5870/5850は共にCypressとなる。Radeon HD 4000シリーズのNaming Ruleを考慮すれば、JuniperがRadeon HD 5830、RedwoodがRadeon HD 5650/5670、CedarがRadeon HD 5450/5470あたりになるのではないかと思うが、これは今後製品が出てみないと判らない。 |
そのCypressだが、設計目標はより高い効率(Photo03)とより高い絶対性能(Photo04)となる。結果、Cypressでは遂に21.5億個ものトランジスタを集積し、1,600ものシェーダーが同時動作することになっている(Photo05)。上位モデルのRadeon HD 5870は400ドル未満の構成を狙っており(Photo06)、にもかかわらず消費電力は待機時に27W、フルロードでも188Wとかなり控えめである。一方、下位モデルであるRadeon HD 5850の場合、フルロードの消費電力は170Wと更に低く、価格も300ドル未満を目指すとしている(Photo07)。
Photo04: 要するに性能を、動作周波数ではなく演算ユニットの数で確保するというアプローチである。シェーダー(AMDの用語ではSP:Stream Processor)の数は世代ごとに倍増しており、これで性能を確保する形になる。逆に言えば動作周波数はそれほど上がっておらず、このためトランジスタの特性を低リークに振りやすいのが、消費電力を抑えられた理由ではないかと思われる。 |
Photo05: Radeon HD 5870と5850が同じトランジスタ数な事からも、ダイが共通なのが判る。ただRadeon HD 3850/4850の場合、SPの数はRadeon HD 3870/4870と変わらず動作周波数だけを抑える構成だったが、Radeon HD 5850ではSPを1割無効化しているのはちょっと興味深い。 |
Photo06: まだ発売までに時間があるためか、正確な価格は未発表 |
Photo07: コアの動作周波数やSP数の削減に伴い、メモリクロックも若干落とされている。ところでうっかり確認しなかったのだが、Radeon HD 5850ではEyefinityは使えるのだろうか? |
ちなみにAMDからは様々なベンチマーク結果も同時に公開されている(Photo08~11)が、これについてはこの後実際に確認してみたいと思う。