NTTドコモ小森光修氏による特別講演

Photo48:NTTドコモ 取締役常務執行役員 研究開発センター所長 小森光修氏

最後に、NTTドコモの小森光修氏(Photo48)による特別公演が行われた。

まずマーケット概況(Photo49,50)を示した。問題はその中身で、やはり一人当たりのパケット通信量が確実に増えており、また動画データの比率がどんどん増えていること(Photo51)など、トラフィックの需要は今後も順調に伸びてゆくと想像されるため、より高速なネットワークが必要という事になる。

Photo49:シェアはともかく、全体としてはすでに1億台を超え、日本ではほぼ1人1台近くに

Photo50:2005年頃から急速にFOMAの割合が増え、現時点では92%に。もっともすでにmovaの新規受付は終了しており、サービスそのものも2012年3月末で終了するから、早めに移行するユーザが結構あったのだろうとは想像できるが

Photo51:これにはパケット料金の値下げとか、新料金プランの投入なども関係しているだろうとは想像されるが、逆に言えばやはりユーザは値段が下がれば通信量を増やしたいのだろう、ともいえる。ちなみに右グラフでWebなどを巡回するのも全部「その他」に入る

また逆にトレンドの面から見ると、大雑把にMobile NetworkはFixed Networkの5年遅れくらいで追従する傾向があり、ここから考えても2010年位にはLTEが登場するのは必然といえる。

Photo52:ただこの図を逆に見ると、LTEが立ち上がる頃には1Gbps前後のFixed Networkがなければいけない事になるが、今のところそうした規格は存在しておらず、ちょっと気になるところだ。まさか802.11nのTrunkingという訳にもいかないと思うのだろうが

そのLTEだが、NTTドコモはLTEに関して標準化作業に早くから携わっており、ほとんどの携帯電話キャリアが次世代はLTEに移行することでもその方向性は間違ってなかった、としている(Photo53)。もっとも現在は、早くからサービスインをすれば先行者利益が獲得できる、というフェーズでは無いのは間違いない。単に帯域を増やしたからといって、ユーザが余分に料金を払ってくれる訳ではないからだ。

Photo53:標準化に早くから携わると、当然ながら早めに規格の方向性の見定めなどもできるし、ワーキンググループに入れば実装に関する検討を早くから行うことになるので、当然サービス時期は早めとなる。NTTドコモが早くからLTEのサービスを始められるのも、こうした標準化作業に携わってきたから、という面は間違いなくあるだろう

こうしたこともあり、NTTドコモはサービス利用型フェムトセル(Photo54)やサービスの進化(Photo55)という形でLTEと連動するかたちで新しい利用モデルの構築を目指している。その一方で端末などに関してはオープン化を進めてゆき(Photo56)、その分もっとデザインやユーザインタフェースの多様化を図るとしている。また、その先の価値創造を目指した基盤研究を引き続き続ける、というのが小森氏のメッセージであった。

Photo54:LTEの場合、基地局の密度を猛烈に高めるわけにはいかないし、干渉が多いと速度も出にくい。これをカバーするのがフェムトセルだが、単にばら撒くだけではFONと変わらない。そこで付加価値を持たせる方法を模索する

Photo55:行動支援の1つの例がiコンシェルで、すでに契約者数は170万を突破したそうである。他にも、今後は産業機器やITS、情報家電/放送などとの融合を図る形のサービス展開を考えているとか

Photo56:OSやミドルウェアの共通化を図ることで、開発コスト低減や共通アプリケーションサービスの充実を図るという方向性が明確に打ち出された。その第一歩が今年夏に発売されたT-01A(Windows Mobile 6.1)とHT-03A(Android)の2つの端末というわけだ

Photo57:今後の基礎研究の方向性の一例