センサAPIを搭載したWindows 7との連携も

3番目がヘルスケアである。医療費や医療関係の出費はこのところ増えており(Photo31)、これの抑制のための、いわば予防治療に近い出費も増え続けている。

Photo31:医療費の出費は高齢化社会では必然的な事でもあり、ある程度は仕方が無い。ただし、自分で健康に留意しよう(=結果的に医療費を減らそう)という動きは当然あり、これをIT業界としてサポートする動きがContinua Health Allianceである

こうした動向に対応して医療/ヘルスケア機器をIT化するための組織であるContinua Health Allianceが標準化を進めており、相互接続性などを維持しようとしている。Freescaleは、こうした機器に利用できる様々なセンサやMCU類をすでに持ち合わせており、さらにContinua向けSoftware Stackを提供することで、アプリケーションを容易に作れるようになっている(Photo32)。今回は、リョーヨーセミコンが提供するMedical Reference Board(注:PDF)が会場および基調講演で紹介された(Photo33~35)。すでにタニタがFreescalのMCUを使って試作機を開発したことも明らかにされた(Photo36)。

Photo32:FreescaleはあくまでもセンサやMCU、コネクティビティなどのコンポーネントと、USB Stackを提供する

Photo33:会場に展示されたMedical Reference Board。Flexis MCUと加速度/圧力/近接センサを搭載し、このままで歩数計および血圧計になる。近接センサは液晶横のタッチパッドに対応する

Photo34:Medical Reference Boardを示して説明を行った長竹功二朗氏(メディカル&インダストリアルソリューション プロジェクト・マネージャ)

Photo35:これはContinua USBに対応した取り込みツールを使い、タニタのContinua USB対応歩数計のデータを取り込んだ結果。ContinuaのCertificationを取った製品は相互接続性が保証されるので、こうしたアプリケーションを簡単に構築できる

Photo36:今回試作したのは体組成計と歩数計の2製品。

Photo37:タニタ 代表取締役社長 谷田千里氏

ここでタニタの谷田千里社長が登壇(Photo37)。今回紹介された体組成計は数週間で開発が済んだそうで、これはFreescaleの提供するライブラリ類が必要十分で、かつサポートも十分だったからだという話であった。今後はさらにさまざまな「健康をはかる」機器(Photo38)を、順次Continua対応にしてゆく、という話であった。

ちなみに後で会場で話を聞いたところ、体組成計そのものには一切手をいれておらず、ここに装着するUSB Stick内部にContinua対応MCUを組み込む形で実装したそうだ(Photo39)。

Photo38:現在イチオシなのが、左端の尿糖計だとか。携帯できるように工夫したことで、糖尿病の人はもとより、そうでない人にも手軽に測定できるようにしたそうだ

Photo39:カバーが開いて奥にUSB Stickがあり、データはここに蓄えられる。これを取り外してPCに装着すると、データが読み出せるという仕組みだそうだ

4つ目が、コンシューマ向けの新しい製品の投入である(Photo40)。まず最初はSmartBook向けのi.MX515であり、SharpのNetWalkerに搭載されたことで一躍有名になった(Photo41)。今回もNetWalkerの実機でInstant OnとYouTubeのプレイバックをデモし、その性能とPCに無い使い勝手を示した(Photo42)。

Photo40:ユーザビリティとインタフェースを変革することで、新たなマーケットを創出しよう、という取り組み。もっとも、こちらはEmerging Marketという扱いであるが

Photo41:Smartbookのみならず、Infortaiment向けとしても使えるというのがi.MX515への説明。ただARMによるSmartbookの定義は、携帯電話などを使って「常時接続を目指す」というコンセプトが入っていた気がするあたり、厳密にはi.MX515だけではSmartBookの理想にはやや機能が足りない気もするが

Photo42:これは起動時間のデモ。会場では4秒ほどで起動した

ただし本題はその次。今回、Freescaleは加速度センサを付けたグローブを使って(Photo43)手や指の位置をリアルタイムでPCに認識させたり(Photo44)、これを使ってバーチャル鍵盤の演奏するといったデモ(Photo45)を行った。別にこの加速度センサ付きグローブを販売したいわけではなく、ここでの要はWindows 7になってセンサ&ロケーションAPIが標準搭載されたことで、従来使われてこなかった、新しいユーザI/Fを作れる可能性が出てきたことである。

Photo43:センサを装着したグローブを嵌める友眞衛氏(技術本部 ジェネラルマネージャー)。どう見てもパワーグロー(略)

Photo44:手の甲や指の位置/角度がほぼ正確にリアルタイムで反映される

Photo45:各指をそれぞれ鍵盤に対応させ、仮想ピアノ鍵盤を弾くといったデモがWindows 7上で行われた

もちろん独自ハードウェア&独自ソフトウェアを使えば従来のOSでもこれは可能だったが、Windows 7からはAPIを使うことでソフトウェアとハードウェアを独立に作れる様になった事だ。ここでMicrosoftの中川哲氏が登壇(Photo46)、Windows 7の概略と大雑把なスケジュールを紹介した後で、Windows 7の搭載するセンサ&ロケーションAPIについての説明を行った(Photo47)。

Photo46:マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏

Photo47:Windows 7は大きく8種類のカテゴリ向けのAPIを新たに搭載しており、今回デモしたセンサ付きグローブもこれらのAPIを使ったものである

これまではWindows 7の移行性とか性能/安定性を多くアピールしてくる方針だったので、敢えてセンサAPIに関しては声高には語ってこなかったそうだが、企業向けにはすでに出荷を始めたこともあり、ぜひISV/IHVにはこのセンサAPIを使って新しいユーザーインタフェースを作ってほしい、というのが氏のメッセージであり、そうしたインタフェースにFreescaleの各種センサが役に立つ、というのがこのセクションにおけるフリースケールのメッセージであった。