G-SHOCKとコラボしているブランド・アンバサダーたちのラインナップも、驚きの連続だ。デザイナーでタトゥーアーチストのMr.カートゥーン、プロサーファーのエリカ・ホセイニやゲイブ・クリング、スノーボーダーのマット・ハマー、スケートボーダーのスティービー・ウィリアムス、そして元プロ・スケートボーダーで現在は写真家のトッド・ジョーダン。
"クールでユニーク"という同じDNAを共有しながらも、ジャンルは異なるカルチャー・ヒーロー/ヒロインたち。そんな彼らが同じステージに肩を並べて現れるという貴重な瞬間に、アメリカのマスコミは釘付けとなった。
イベント直前、インタビューに応じてくれたトッド・ジョーダンは、世界を旅したときの思い出を語ってくれた。スケートボードとカメラを携えて東欧、ロシア、日本、南米、中東と周った彼、これまで滑った中でサイコーだったのはカザフスタン、と熱く語る。 「NYは世界で一番ラフな街。ここで滑れたら、世界中どこでも滑ることができる。サバイバルで荒っぽいこの街に、タフなG-SHOCKはすごく似つかわしい。他社が何を作ろうと、独自の信念に基づいてモノ作りを追求するカシオの姿勢が、僕は大好きだ」とも。
トッド同様、G-SHOCKファンを公言してはばからないポップ・アイコンの一人が、人気シンガーのカニエ・ウェストだ。第2部では場内の灯りが落ち、1,400人ものオーディエンスの熱い期待が最高潮まで高まったその時、華麗に登場! バックダンサーたちを従えて、ヒットチューンを次々に繰り出していく。
シプリアーニという豪奢な空間で、およそ1時間半にも渡るカニエのフル・コンサート。そう、こんな組み合わせってもう今夜しかありえない。
「今夜のようなイベントに出演したいから」
後半、カニエはラップの最中こんなアドリブを入れていた――「BET(超大手の黒人専門TV局)なんてオレは出演しない、だって今日みたいなライブができなくなるから!」
つまり超メジャーなメディアはあえて避け、本当に自分が出たいと望むステージこそ大事にしたい、そんなメッセージ。グラミー賞まで獲っている彼の口から発せられる一言だけに、重みもひとしおだ。
VIPエリアには、名門ヒップホップ・レーベルのデフ・ジャム創始者ラッセル・シモンズや、ネオソウルシンガーのエリカ・バドゥ、アシャンティといったそうそうたる顔ぶれが。
そして、カニエに熱狂する人々を見ているうち、ハタと面白い事実に気がついた。ここに集っているのは、白人ビジネスマン、R&B志向のアフリカン系アメリカ人、ストリートファッション系の女の子、マスコミ関係者、ラッパー、ショービズ関係者とお連れのハイファッション系ご婦人、サーファー、ラフなファッションのスケーター男子……と実に多種多様なのだ。
ニューヨークは「人種のるつぼ」と言われるが、正確には人種の"サラダボウル"。 混じり合うのではなく、ライフスタイルやバックグラウンドによる、明確な"棲み分け"が存在する。だからこそ、普段はまず同じ屋根の下にいることのない人々が同じステージに歓声を上げているのは、実はとてもレアな光景なのだ。
そう、それはまさにG-SHOCKの多様性そのもの。訴求対象の"振り幅の豊かさ"を象徴していると言っていい。そしてカニエが放った、冒頭のシャウト「I love you, Casio!」――なんだかいろんな可能性が見えてくる、そんな一夜だった。