AODの倍率変更で4GHzを狙う

オーバークロックの手順を紹介していこう。今回用いるPhenom II X4 955は、Phenom II X4の最高クロック製品であるとともに、倍率が固定されていないBlack Editionでもある。そこでまずは(全コア)倍率変更によるオーバークロック手法を試していこう。

Phenom II X4 955のベースクロックは200MHz。規定クロック3.2GHz時の倍率は16倍となる。倍率を変更する手段としては、AMD公式のオーバークロックツールである「AMD OverDrive」(AOD)を利用するのが簡単だ。AODの場合、BIOS設定を繰り返す必要無く、まず定格クロックで起動してからWindows上で倍率変更できる。ただし、AODのインストール直後はNovice Mode(初心者モード)で起動するため、PerformanceタブからこれをAdvanced Modeに変更してから使用した。また、AODでは各所の電圧も設定可能であるが、これは標準設定から開始し、壁に当たった段階で1段階引き上げる手法で試していった。

「AMD OverDrive 3.0.2」を用いて倍率変更によるオーバークロックを検証。まずはPerformanceタブからAdvanced Modeに切り替える

Advanced Mode時のPerformance ControlタブにあるClock/Voltageで全てのコアの倍率を変更する手法を採った。また、右下の電圧設定項目も必要に応じて変更していく

オーバークロックの成功は、Futuremarkのベンチマークソフト「PCMark05」の完走をもって判定していくこととした。PCMark05はマルチスレッディングに対応しており、CPU、メモリ、HDD、グラフィックスなど、満遍なくシステム負荷をかけるため、簡易ながら安定度を計るにはちょうど良いと言えるだろう。

Phenom II X4 955 Black Editionの規定動作時のCPU-Zスクリーンショット

以上、簡単に設定と条件を示したところで早速結果を紹介していこう。まず、標準のコア電圧(1.350V)でベンチマークの完走を確認できたのは18倍の3.60GHzまでだ。19倍の3.80GHzではコア電圧が1.350Vのままでは、起動こそするもののベンチマーク中にエラーが発生した。コア電圧を1.40Vに引き上げることで、ベンチマークを完走させることができたが、これ以上のクロックでは動作させることができなかった。まず20倍の4GHzにチャレンジしてみたのだが、1.4V~1.45VまではPCMark05の起動中にブルースクリーンが発生した。そして1.475VではPCMark05は起動したものの、ベンチマークは完走できず。また、1.50Vにも挑戦してみたが、再度PCMark05が起動しなくなるという結果となった。一方、19.5倍の3.90GHzも完走できず。

倍率を18倍に引き上げた3.60GHz時までは定格電圧で動作を確認

倍率を19倍に引き上げると定格電圧では動作が安定せず、1.40Vまで引き上げたところで完走を確認できた。計測時は外気温も高かったこともあり、あまりコア電圧を引き上げすぎるとクーラーの性能限界か、むしろ状況が悪化するという環境だった