島民の3倍を超えるツアー客が訪問予定

人口は70人強。トカラの島々はどこもだいだいこんな具合で、最大人口の中之島でも150人、少ない島は50人程度である。悪石島でつながる携帯電話はNTTドコモのみ。コンビニなど気のきいた(?)ものは一切なく、食堂もない。あるのは商店がひとつだけ。なにしろフェリーの接岸中、島民がフェリー内の売店へ買い物に行くくらいだ。飲料の自動販売機もひとつ。なのでどの宿も3食付きが基本である (*2) 。

ともかくそんな島が、世界的大イベントの中心地となるわけだ。すでに周知のことだろうが、今回の皆既日食、十島村ではフリーの(個人手配による)来島をすべて断り、ツアーを近畿日本ツーリストに一任した。この期間、フェリーとしまもツアー客と関係者のみの受け付けとなり、観光客が自由旅行することはできないようになっている。

5軒の民宿だけでは、どう考えても多数のツアー客をさばけない。そこで、島で唯一の広い平地といってもいい悪石島小中学校のグラウンドと体育館も寝泊まりに利用される。すでに仮設トイレなどは島に運び込まれ、準備が着々と進められている

十島村が取ったこの対策は賢明な手といえるだろう。トカラの島々に数千人規模が一気に押し寄せたら、それは一大騒動どころではなくもはや混乱、カオスともなりかねない。ツアーは村全体で約1,500人、悪石島では250人程度を受け入れるという。同社によれば、本記事を書いている6月末時点でコースによってはまだ空きがあり、募集が続けられている。定員に達すれば締め切りとなるのでいついつまで申し込めると断言はできないものの、興味があるなら同社のウェブサイト「2009年皆既日食ツアー」(*3)を確認していただきたい。

港から上集落へ向かう途中、港を見下ろしたところ。徒歩わずか10分か15分でこの標高差。島内は起伏が激しく、どこも坂だらけだ。この日は波がやや高く、岸壁に当たって波頭が真っ白に砕けている

【*2】インターネットについては、コミュニティセンターに住民向けのブロードバンド接続端末が3台用意されており、これについては観光客も無料で利用できる。ただしここで持ち込んだ端末を接続することはできない。
【*3】 トカラ列島以外に、種子島の一部や屋久島、および奄美大島と喜界島の一部でも、時間こそ短いが(1~4分程度)皆既日食を観測できる。近畿日本ツーリストでは奄美大島についても観測ツアーを設定しており、こちらも6月末時点ではコースにより空きがあるとのこと。また中国の上海周辺やインドなどでも観測が可能という。