毎年更新を続けてきた「vPro」

IntelのビジネスPC向けプラットフォーム「vPro」は、企業ユーザー向けのクライアントPCだ。最初の第1世代が発表されたのは2006年で、その後2007年に第2世代、2008年に第3世代と毎年更新を受けている。

第1世代のvProプラットフォームは、65nmプロセスの「Core2 Duoプロセッサ」に、「Q965 Expressチップセット+ICH8DO」「82566DMギガビット・ネットワーク・コネクション」というハードウェア、AMT(Intel Active Management Technology)リリース2.0、VT(Intel Virtualization Technology)といったプラットフォーム・テクノロジーを組み合わせた構成だった。また、第1世代で掲げられたvProのアピール・ポイントは「高度なセキュリティ」「運用管理」「低消費電力」の3点だった。

続く第2世代はいわば正常進化といった趣で、プロセッサの性能向上と、それに伴うアイドル電力の削減が謳われたことに加え、新たな管理規格としてWS-MAN(Web Services Management)やDASH(Desktop & mobile Architecture for System Hardware)への対応も行なわれた。プロセッサは「Core2 Quad/Core2 Duo」、チップセットは「Q35 Express+ICH9DO」に更新された。また、AMTがリリース3.0に変わったのに加え、新たに、「ダイレクトI/O向けインテルVT」や「TXT(Intel Trusted Execution Technology)」も組み込まれた。

第3世代のハードウェアは、プロセッサが45nmプロセスの「Core2 Quad/Duo」になり、チップセットは「Q45 Express+ICH10DO」に、ネットワーク・インタフェースが「82567LMギガビット・ネットワーク・コネクション」になった。また、よりインパクトの大きな変更として、AMTのバージョン番号が一気に上がり、「リリース5.0」となって管理機能が拡充している。例えば、ファイアウォールの外からでもPC保護が可能になったり、「リモート・スケジュールド・メンテナンス」機能が実装されたりしている。

このように、年々機能強化が図られているvProだが、進化が速すぎるとユーザーが付いてこないという問題も生じる。企業内のクライアントPCは3~4年程度の期間のリースによる導入が主となる。更新のタイミングも全社一律という事はなく部分的にバラバラなタイミングで更新されるという企業が多いだろう。こうなると、環境がvProで統一されていることが前提となっているリモートからの遠隔管理機能などはその有効性が限定されてしまうのではないかという懸念もある。また、毎年世代が変わっていくことで、vProを導入した企業でもしばらくすると企業内の世代がバラついてしまい、機能面での差異から全クライアント一律の管理が難しくなってしまうのではないか、とも想像される。

vProは実際に市場でどのように受け入れられ、活用されているのだろうか。その実情について有力SI事業者であるCSKシステムズの流通グループ 開発部 部長の梶田 清隆氏と同じく開発部 第一開発課 主事の伊藤 信行氏にユーザー企業での状況を聞いてみた。

左がCSKシステムズ 流通グループ 開発部 部長の梶田清隆氏、右が同社 開発部 第一開発課 主事の伊藤信行氏