最後は「iPhone 3G S」だ。本体デザインは現行のiPhone 3Gと変わらない。違いは、3Gではグレイで描かれている背面のiPhoneの文字が銀色になったぐらいだ。しかし動作速度は、iPhone 3Gの最大2倍である。その処理性能を活かし、画面に触れることで任意の場所にピントを合わせられるカメラ、動画の撮影と編集、音声コントロール、コンパス、ハードウェア暗号化などの新機能を実現している。
JavaScript実行速度ベンチマーク(SunSpider JavaScript Benchmark)。iPhone OS 2.2.1に比べるとiPhone OS 3.0は約1/3だが、iPhone 3G Sではさらに1/3になる |
音声コントロールは、「Play songs by the Killers(Killersの曲をかけろ)」や「Play more songs like this (これと同じような曲をかけろ)」などといったコマンドだけではなく、再生中の曲について「What's playing? (何を再生している?)」と尋ねられるなど、幅広い操作に対応する。基調講演では英語によるデモのみだったが、日本語を含む複数の言語をサポートする。
Shiller氏いわく、iPhone 3G Sは「最速かつ最もパワフルなiPhone」である。同時に米国においては16GBモデルが199ドル、32GBモデルが299ドル。さらにiPhone 3Gの8GBモデルが99ドルで販売される。「より手頃になったiPhone」(Shiller氏)は、6月19日から8月9日にかけて世界80カ国で発売される。
短期間での世界展開に注目
今回のiPhone 3G S発表で注目すべきは、短期間での世界展開を実現している点だ。昨年の今頃までのiPhoneは主にハードウェアの魅力で売れていた。だが今日では、iPhoneアプリや対応WebアプリがiPhoneにユーザーを引き込んでいる。iPhoneを含めて多機能携帯/スマートフォンのハードウェア仕様は、もはや以前のようなセールスポイントではない。そのモバイルプラットフォーム上で、どのようなソフトウェアやサービスを利用できるかがユーザーにとって重要である。
ライバル端末が次々と登場する中、Appleは開発者コミュニティをより強固にするべきであり、現段階で開発者を混乱に陥れるような劇的な変更をiPhoneに加えるのは得策ではない。パフォーマンスの強化、開発者の新たなアイディアを引き出す新機能の追加は順当なiPhoneの進化である。そして短期間での世界展開は、iPhoneのプラットフォームとしての役割をAppleが重視している現れと言える。