ブルゴーニュワイン事務局(BIVB)コミュニケーション委員会委員長であるアンヌ・パラン氏は、ブルゴーニュ大学法学部を卒業後、ワイン輸出国際貿易免許やA diploma of technician in oenology(ワイン醸造の学位)を取得。ブルゴーニュワイン発展のために貢献している。またアメリカの第3代大統領トマス・ジェファソンの御用達ワインとして名高いドメーヌ・パランの第13代当主で、生産者としての顔も持っている。
ブレンドをするボルドー、しないブルゴーニュ
先ほど、「ボルドーとブルゴーニュは双璧をなす」と書いたが、それはつまりは好対照であるという意味だ。まずボルドーは、ワインの品種をブレンドして造る。赤ならメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン(時にはプティ・ヴェールド)を、白ならソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカデルを。セパージュ(割合)は各シャトー(ボルドーではワイナリーのことをこう呼ぶことが多い)やヴィンテージによって変わる。
そして57ものAOCがあり、さらにはメドック、サンテミリオンといった地域ごとの格付けがあり、その中にもセカンドワインなる存在がある。読者の皆さん、そろそろ頭の中がこんがらがってきたのではなかろうか。よほど整理して勉強しないと、この"決まりごと"を把握するのは困難を極める。
一方のブルゴーニュはというと、品種は白ならシャルドネ(一部の地区ではアリゴテ)、赤ならピノ・ノワール(ボージョレはガメイ)のみで決してブレンドはしない。AOCは生産地方・地区名→村→プルミエ・クリュ(1級畑)→グラン・クリュ(特級畑)の4段階、つまりAOC自体が格付けになっているのが特徴で、こちらは極めてシンプルで分かりやすい。
もちろん、ブルゴーニュがボルドーをまったく意識しないといえば嘘になるだろうが、「うちはうち、今回はブルゴーニュの基本とブルゴーニュワインにとって日本の市場がいかに重要であるか」をわかってもらうための来日だとパラン氏は言う。
ブルゴーニュといえば……実は"白"
フランスの中央部分より東寄り、つまりスイス寄りに位置するディジョン(かつてのブルゴーニュ公国の首都)からマコンまで、南北に230kmという長い生産地を有し(27,600ha・フランスの全ブドウ園の3%)、毎年2億本のワインを生産している。
DIJON(ディジョン)から南に下ったMACON(マコン)までとディジョンから北西に約80km離れたシャブリ地区がブルゴーニュワイン委員会の管轄 |
ついつい「ロマネ・コンティ」を想像して、"ブルゴーニュ=赤ワイン"とイメージしがちだが、実は赤ワインの生産は全体の31%。シャブリや我々消費者には手に取りやすいマコンなどの白ワインが61%を占める。残りの8%はクレマン・ド・ブルゴーニュというスパークリングワインで、近年飛躍的な伸びを見せている。シャンパーニュよりも随分リーズナブルで、品質的にも優れているものが多く、今後も需要が高まっていくことが予想されるブルゴーニュの注目株だ。
日本への輸出はというと、2007年8月から2008年7月までは、量ならばイギリス、アメリカ、ベルギーに続く第4位でブルゴーニュ全生産量の1割弱を占める。輸出額はイギリス、アメリカに次ぐ3位。内訳は白ワイン57%、赤ワイン40%、クレマン・ド・ブルゴーニュが3%である。こうして見ると、日本人の"高級な赤ワイン"好きが浮き彫りになってくるのは面白いが、いずれにせよ、ブルゴーニュのワイン生産者にとって日本がいかに重要な市場かがおわかりいただけるだろう。