また、ヒマラヤの8,000m峰のうち8座を有するネパールと日本には、3時間15分という時差がある。これまでのワールドタイム機能を備える製品では、この特殊な「15分」を合わせることができなかった。

この点もPRX-2000Tでは解消している。高度計の心臓部である圧力センサーも、温度センサーを裏側に組み、計測精度を大幅に向上させ、しかも体積比で約60%ダウンさせた。さらに、ザラツ研磨という熟練職人ならではの技により、ベゼル上面には美しい鏡面加工が施された。

こうしたレベルにまで達したPROTREKには、「いつか叶えなければ課題があります」(牛山さん)というのだが、

竹内「現行モデルでは5m単位で表示する高度計を、次作では1m単位で小刻みに表示するようにしてほしいです。平地にいて、1m、5mという高低は大したことには思えないでしょうが、8,000mの高所で5m登るのは大変なことなのです。ですから1m刻みで表示されれば、数字的な意味合いで大きな励みになります。

竹内氏が実際のクライミングで使用しているツール

それに高度計の真価は、じつは下りの場面でこそ発揮されるのです。地上に比べて酸素量が3分の1の場面では、万が一下りすぎてしまった場合、登り返すことができないかもしれない。降り過ぎてしまうことは、まさに命取りとなるからです」

さらにPROTREKを使って4年になるという竹内氏はこう続けた。

竹内「最初のモデルの高度計は4,000mまで。それが6,000mになり10,000mになりました。我々の道具選びの秘訣は、"必要な物以外は持たない"ということ。ですから当初、厚く重かったPROTREKは"高度計"として選び、腕には別のアナログウォッチを装着したこともありました。しかし、PRW-1300やPRX-2000Tが完成した今は、高度計かつ腕時計としてPROTREKを選んでいるのです。

ヒマラヤには、8,000m級の山がエベレストをはじめ14座あります。17、8年かけて私は、11の山を登ってきました。14座すべての登頂に成功したのは世界で14名くらいで、日本人の成功者はまだいません。ここ数年のうちに私は、日本人として初の14座制覇を達成したいと考えています。PROTREKと共に、まだまだ進化していきたいのです。あと3つの山の頂に、日本のナショナルブランドであるPROTREKと共に立つ。それも私とPROTREKの、次世代へと繋がる経験となるのです」