竹内洋岳氏 |
PRW-1300の方位計には、実際のフィールドで目標方位をメモリーでき、目指す方向へ直進できるベアリングメモリー機能が備えられている。また、高度計には任意の場所からの高度差を表示する機能も備えており、牛山氏は、等高線を何本跨いだのかを把握することの重要性を力説する。実践で高度計の表示が50m、100m違ったら、どれほど危険なのかを理解してもらうため、牛山氏は開発チームを八ヶ岳に連れていったという。しかし、このモデルにも改善すべき点はあったのだ。
牛山和人(以下、牛山)「高度メモリーに関しては、従来モデルでは一定時間ごとに自動的に記録していましたが、PRX-2000Tでは任意の場所の高度を記録できるよう計測月日、時刻、高度を最大25本のマニュアルメモリーとしました」
竹内洋岳(以下、竹内)「登りで重要な分岐の標高を記録しておけば、下りでその分岐の位置を標高から確認できます。そうすると、登頂後の下山でホワイトアウトのような状況になっても、これ以上、下ってはいけないということを把握できるのです。それに自分が、何時何分に頂上に立った、などということもツールが覚えていてくれるのです」
体力の限界といった状況で万一、ルートを外して降り過ぎてしまった場合、登り直すことは困難となり、生命の危機に直結することさえあるからだという。このためPRX-2000Tでは、敢えて高度メモリーをユーザーが手動で記録できるようになったのだ。さらにPRX-2000Tでは、日の出、日の入りといった情報を計算する機能を備えるが、二層液晶により日没までの行動時間をグラフィックで表現し、視認性にも十分配慮している。
牛山「山では、日のあるうちに行動することが基本ですから」
竹内「それに、行動不能になる前に動こうというモチベーションを高めてくれますね」
実は、この方位や気圧差などをグラフィック表示する2重液晶表示機能は、PRW-1000には採用されていたが、前作のPRW-1300には装備されていなかった。
一般的なアウトドア・ウォッチとして優秀なPRW-1000だったが、それでも標高8,000mのヒマラヤ登山では、「厚く大きく、腕への装着はできなかったんです。クライミングではロープを扱いながら登ります。限界に近い中、手先だけで微妙な作業をするとき、PRW-1000の厚さでは引っかかるのです。わずか数秒のタイムロスでも、これを繰り返せば大きなタイムロスになります。8,000mの登山では、これが大きな手かせとなってしまうのです」(竹内さん)という。このためPRW-1300では二層液晶を外しスリムにしたが、PRX-2000Tには、高密度実装技術を駆使。各パーツを小型・薄型化することで再び採用することができたのだという。
牛山「新作のPRX-2000Tは、PRW-1300よりもさらに高密度実装技術を追求し、風防ガラスの取り付け構造や、二層液晶のガラス間のクリアランスに至るまで、まさに極限を追求しました」……続きを読む