ゲーム、そしてアニメへの展開は?
――ぜひ、浅川先生を見てみたいです(笑)。ボーカロイドの取材だと、アニメとは違うので、なにを話していいのか、戸惑うことってありますよね?
藤田&下田「あーーーー」
藤田「まずは、ボーカロイドについて説明してくださいって質問をいただくんですけど、ボーカロイドそのものの説明だとクリプトンさんのほうが上手だし、外見の話をしても、ユーザーさんのほうが知ってますしね。何をいうべきか、何を話すべきかすごい迷います」
下田「そうそうそう。設定とかもユーザーさんのほうが知っている。去年の取材ラッシュのときは咲ちゃんと『どう答えていいのか、よくわからないよね』ていってた。だから今日は浅川さんもそうなのかな、と思っていました」
浅川「大丈夫です」
――なるほど。では、セガさんの『初音ミク -Project DIVA-』(PSP用リズムアクションゲーム)の収録は、感情移入するのは大変でしたか?
藤田「実は『DIVA』の収録のおかげで初音ミクが私の中に帰ってきた感覚が生まれたんです。それまではユーザーさんの中にいるだろう『初音ミク』と『自分の初音ミク』が違ってはいけないんだと勝手に思い込んでいた気がするんですが、『DIVA』を収録したことで、私の初音ミクが実体化しました。皆さんの心にも初音ミクが生きているように、私の中の初音ミクも生きているんだと。昔のインタビューで『産み落としちゃったので、それで一度おしまい、ココから先は皆さんの力もかりて旅立ってゆく』みたいなことを話したことがあるんですよ」
下田「いってたよね」
藤田「だから浅川さんが『産み落とした子ども』という表現をなさったときは、『あ、当時の私と同じだ』とすごくびっくりしてしまいました。でも、VOCALOIDが凄いのは、また、私の中に戻ってきたところです。収録時は、名前も設定もなにもない状態で、『清楚で可愛いイメージでお願いします』とだけディレクションしていただき挑んだんですけど、私なりにVOCALOIDだから歌が好きなんだろうとか、キャラの輪郭を構築してから録りました。それを『DIVA』の話をいただいたときに思い出しまして……。ああ、私の初音ミクはこんな子だったと……、ようするに帰ってきたんです(笑)。すごく面白い感覚です。こういう経験はこれまでしたことがありませんでした」
下田「確かにないよね。今までずっと『キャラクターの声ではしゃべっちゃダメ』っていわれてたんですよ」
藤田「うん、いわれてたー」
下田「自分のなかでしゃべったらこうだろうってイメージはあったんですけど、それを公式のものとして出してはいけなかった。本来は歌うソフトなのでしゃべることを考えるのはおかしいんですけど、自然にこんな感じというのをすごく持っていたんですよ。ある意味、ずっとやりたくてもできなかったキャラクターなんです。それが演じるってことができるようになったのは単純に嬉しいですね。ユーザーさんたちに気に入っていただけるとよいのですが」
――3人で一緒のゲームやアニメになったらいいですね
浅川「ルカの声で、ですか? 困りますねぇ、うーん」
下田「ダメですよ。やりましょうよー」
浅川「いや、VOCALOIDでやってくれい。あんまりアニメとかゲームとか、こっちの世界だけに引き戻したくないという思いがありますね。せっかく一般の人にも広がっているので、音楽をどんどん作ってくれればいいな、と。公式でイメージを作っちゃうのはショックを受ける人もいると思うんですよ。でも、喜んでくれる人もいるのか。自分が表に出ることで、この子の助けになることがあるなら出ますけど。もし、そういう話をいただいたら、頑張ります」
――VOCALOID2のおかげで皆さんの声をユーザーさんが使えるようになったわけですが、声優というご職業柄、使ってみたい声というのはありますか?
浅川「私は特に……自分だけでせいいっぱいなので」
藤田「男性の声が出せたらいいですね。ちゃんとした成人の男性の声を。絶対できないからこその夢です。あと、単純に声帯が2個ほしいです。1つが疲れたらチェンジして、交互に使います(笑)」
下田「えと、個人名でいいですか? 大塚芳忠さん (『機動戦士Zガンダム』のヤザン・ゲーブル役や洋画の吹き替えなどで知られる渋い声の声優)の声がほしい。楽しそうだ。絶対、楽しいと思うんですよ、あの声が出せたら」
――大塚芳忠さんバージョンのVOCALOID2だったら、コアな人気が出そうですね。クリプトンさんに伝えておきます。最後に、ほかにクリプトンさんに一言ありますか?
藤田「そうですね。もし、機会があれば英語もという話は聞いていますけども」
下田「もっと早くキャラクターのイラストを見せて欲しかったです(笑)。初めてリンちゃんとレンちゃんを見たときは、予想以上に子どもっぽい顔だったので驚きました、と」
浅川「日本語は2度収録したんですよ。キレイに録れなかったから『もう一回録り直し』といわれて。なるほど、小さなスタジオだったし、そういうこともあるのか、と思っていたら、実際は疲れてだるくなった感じがすごくよかったという理由で録り直しだったらしく……。この前、イベントの現場で発覚したことですが、それはちょっと怒ってます。騙したな、と伝えておいてください(笑)」
――伝えておきます(笑)。それでは皆さん本日はありがとうございました
今回の座談会は、毎日コミュニケーションズ「PCfan 5月号」(3/29発売号)に掲載された、特別企画「VOCALOID2声優スペシャル座談会」の完全版となっています。
(撮影 / 磯崎威志)
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