音階と歌詞を入力するだけでボーカルパートが完成するクリプトン・フューチャー・メディアの「VOCALOID2」。DTM初心者でも気軽に音楽制作を始められる操作性と従来ではなしえなかった自然な音声の再現によって高い人気を誇る本シリーズに命を吹き込んだ、キャラクター・ボーカル・シリーズ第一弾「初音ミク」の藤田咲、第二弾「鏡音リン・レン」の下田麻美、そして最新作である第三弾「巡音ルカ」の浅川悠といった声優陣によるスペシャル座談会の様子をお伝えしよう。
ボーカロイド3人娘が語る「VOCALOID2」
――まずは浅川さん、「VOCALOID2」第3弾を担当する話はいつ頃、伝えられたのですか?
浅川悠 (あさかわ・ゆう) |
浅川「一昨年の春くらいに事務所で『こういうのだよ』と初音ミクを見せられて。当時はどういうものかは知らなかったから、普通のゲームの仕事かなって思ってました。打ち合わせのときに、DTMソフトという説明を受けて」
――盛り上がりは知らなかった?
浅川「知らなかった。たまたま個人的にネットで調べものをしているときに動画サイトを覗いたら、ミクちゃんがいて。そこで初めて『あ、この前、聞いたやつだ。いっぱいある。これか。早く人にいいたいな』って。なのに2年くらい黙らされていましたね(笑)」
――声のイメージに対して指定はあったのですか?
浅川「全然、なかったですね。普段の仕事ではそういうことはないんですけど、名前もキャラクターもその時点では決まっていなかったですし。打ち合わせのときに、ミクちゃんが清楚でかわいい感じなので、違う雰囲気にしたいとは聞いていましたが、特に指定はなかったです」
――ではキャラクターを見たのは?
浅川「見たのは発売の1日前ですね。違う取材の最中に見せていただいて『ああ、これなんだ』と。名前もそのとき。ほとんど皆さんと同じタイミングでした」
――巡音ルカの感想はいかがです?
浅川「おそらく自分が演じるキャラクターだから、こんな感じかなというのが普通はありますが、今回はまったく想像できなかった。私の声がイラスト化すると、こういう感じになるのかと素直に感心しています。思ったより、可愛いし、女の子らしかった」
下田「ルカちゃん、可愛いなぁ、それにセクシー。こういうお姉さんがいると安心する」
――浅川さんといえば、アニメでは大人っぽいキャラの役が多いですが?
浅川「(小さな声で)いや、本人は違うんですけど。業界的には……はい、騙しています」
――以前、藤田さんと下田さんに呪文のような言葉を録ると伺いましたが、レコーディングはいかがでしたか?
浅川「日本語は別段、いいづらいものはなかったので、すんなり収録できたのですが、英語はテキストの量が日本語の倍。ちょっと多いとは聞いていたのですが、ちょっとどころじゃない。PCゲームの収録と同じくらい、しゃべった気が。特に日本語にない発音は大変。大惨事まではいきませんでしたが、THのあとにRがあったりすると『うーん、舌が届かない』と。収録の間は立っていなきゃいけないので、声は出るけど足がつらかった……。もう一回、やってくれといわれたら、ちょっと考えます(笑)」
藤田「私が一番、楽だったみたいで、良かったです(笑)」
下田「なに現象っていうんでしたっけ? あっ、ゲシュタルト崩壊だ。書いてある言葉がわからなくなるやつ。カタカナ読めなくなりませんでした?」
浅川「ソとリがわからなくなるよね。これが漢字だったらと思うと恐ろしい」
藤田「そうですね」
下田「途中で自分が何人なのか、わからなくなって、休憩になってやっと『そうだ、日本人だった』と戻る、みたいな(笑)」
――台本を見てみたいですね。やはり秘密なんですか?
藤田「秘密なんですよねってクリプトンさんにいったら『そうでもないです」っていってましたよ(笑)」
浅川「……ガクト(※)さんも、あの収録したのかなって思うと」
下田「やっぱり同じことやっているんですよね?」
藤田「そうだと思うけど、どうなんでしょうか」
※ インターネットより発売されているVOCALOID2技術を採用した音声合成ソフト「がくっぽいど」で、歌手のガクトが声を担当している |