熊野本宮大社には、檜皮葺(ひわだぶき)の3つの社殿が並んでいる。中央の社殿には主神の家津美御子神(けつみみこのかみ)、左手には速玉(はやたま)と牟須美(むすみ)の両神、右手には天照皇大神(あまてらすすめおおみかみ)がそれぞれ祀られていて、お参りもこの順番で行う。

ようやく辿り着いた熊野本宮大社。質素だが厳かな空気が流れているようだった

八咫烏のシンボルと鳥居。八咫烏は日本サッカー協会のシンボルマークとしても知られている

本宮大社は、八咫烏(やたがらす)のシンボルがあちらこちらで見られる。八咫烏とは、巨大な三本足の烏の意味で、熊野では、古くから烏が神の使いだと考えられていたという。というのも、八咫烏は日向の高千穂から熊野に上陸した神武天皇が、地元の部族の抵抗に遭遇した際に、天照大神が八咫烏を神武天皇につかわし、その先導で部族を征服していったという神話のためだ。本宮大社には、八咫烏をあしらったお守りやグッズもいろいろと並んでいた。

本宮大社から歩いて5分ほどの距離に、大斎原がある。大鳥居の大きさを改めて実感しながら辿り着いたその場所は、広大な空間というのが正直な第一印象だった。敷地の広さは1万坪。いくつもの社殿や能舞台などが立ち並んでいたというこの場所を、中世の人々は目指したのである。「老若男女、浄不浄、貴賎を問わず」受け入れた熊野三山には、上皇法皇から庶民まで、ありとあらゆる人々がやって来たのだった。

間近で見ると、その大きさが改めてわかる大鳥居。毎年元旦はライトアップされる

最後に1800年前に発見されたという湯の峰温泉を訪ね、世界遺産に登録された温泉浴場である「つぼ湯」を見学した。川の横にあるこの天然の岩風呂は、日に7回色を変えるといわれている。次回は、より本格的なコースを歩き、最後に熊野詣の疲れをここで癒してみたいと思いながら、湯煙の立つ温泉郷を後にした。

湯の峰温泉のつぼ湯は、死の世界をさまよった小栗判官が息を吹き返した伝説でも知られている

熊野で健康.com は和歌山県が運営する「熊野で健康!」をアピールするウェブサイト。ストレスなどで疲れた現代人を熊野で元気にしようという民間連携プロジェクトで、定期的に開催する熊野古道ウォーキングイベントやウォーキングガイドなど様々な情報を提供している。熊野育ちの若手インストラクターによるリアルなブログや古道イラストマップもあるので、熊野のイメージをつかみやすいと評判だ。