3ヴィンテージの味の違いを楽しむ

ルミエールの製造部栽培課課長・小山田幸紀さん

ルミエールのテーマは「ヴィンテージの違い」。今回はルミエールの「イストワール」という赤ワインの2004年、2005年、2006年を比べた。3ヴィンテージとも基本的にカベルネ・フランとブラック・クイーンの混醸で、ヴィンテージによってその比率が異なる。

カベルネ・フランはフランスのボルドーやロワール地方が有名で、主にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどに補助品種として混ぜるのが一般的であるが、その比率は少ない(もちろんカベルネ・フラン100%のワインも存在する)。しかしこのイストワールは、小山田さんのカベルネ・フラン好きが高じて半分以上の比率で使われている。品種の特徴は色も薄めで味わいは軽やか。

一方ブラック・クイーンは、1927年に川上善兵衛さんがベリーとゴールデン・クイーンを交配してつくった日本固有品種。色調は濃く、酸味も強い。よって、ボディのあるワインになる。

  1. 「イストワール2004」: カベルネ・フラン+メルローで60%、ブラック・クイーン40%。イストワールのファーストヴィンテージで、メルローが入っている。猛暑だったこの年。真っ赤なバラを思わせる華やかな香り、ほどよい酸とこなれたタンニンが4年の熟成を感じさせる
  2. 「イストワール2005」: カベルネ・フラン65%、ブラック・クイーン35%。極めて凡庸な年。きれいなルビー色で、黒い果実というよりもイチゴジャムのようなチャーミングな香りがする。酸はしっかりと、タンニンは後からじわじわと追いかけてくる
  3. 「イストワール2006」: カベルネ・フラン60%、ブラック・クイーン40%。日照不足に見舞われた年。甘酸っぱい(フレッシュの)イチゴの香りを持つ。水っぽく、少し糖が足りない気もするが、樽にて熟成中のサンプルとのこと。今後さらに熟成を進め、瓶詰め後の熟成によっても変化する可能性あり

品種の個性をいかしつつ、その年の気候によって混ぜる比率を変えて、最善と思われる計算式でワインを仕込んでいく。実際、これら3種類のワインは同じ品種でできているとは思えないほど、違った個性に仕上がっている。

さらに小山田さんは現在、ビオディナミを実践している。ビオディナミを説明すると長くなるのだが、簡単にいうと化学農薬を一切使用せず(ただし、ボルドー液を除く)、月の運行によって畑の作業を進める、いわゆる自然派といわれるワイン造りだ。これは今、世界的な潮流ともいえるわけだが、小山田さん曰く、「(潮流だからというよりも)飲んでおいしいかどうかが大切です」。結果、行き着いた先がビオディナミだったといというわけだ。始めて4年ほどであるが、徐々に変化が現れてきているという。この先、ルミエールのワインがどう変わっていくのかが楽しみなところである。

セミナーで登場したワイン6種