以前、山梨・小淵沢のリゾートホテル「リゾナーレ」が取り組むワインプロジェクトについて書いた。もちろん、ぶどうを育て、最終的にはワインを造るということが第一の目的であろうが、それだけではワイン文化を発信することにはならない。やはり、このプロジェクトを通して、より多くの人にワインをもっと知ってもらい、そして好きになってもらわなければ。

リゾナーレのワインプロジェクトについてはこちら
【レポート】ワイン王国・山梨での新たな取り組み - ぶどう栽培から醸造までホテルが一括管理し、オリジナルワインの生産
山梨県北杜市小淵沢町。この高原リゾート地に、レストランやチャペル、温浴施設、ショッピング街が集結したリゾートホテル「リゾナーレ」がある。施設から1歩も出ることなく、充実したホテルライフを過ごすことができる充実の設備が魅力である。そんな同ホテルが、ぶどう栽培から醸造までを一括管理するワイン造りをはじめていると聞き、早速小淵沢に向かった。

日本ワインブームの背景

幸い、国内のワイン業界は横の繋がりがとても良好だ。産地が違えど県を越えても常に情報を交換し合い、そして刺激を受けあっている。とりわけ、大学で醸造を学び卒業後は全国各地のワイナリーへと就職した今30代くらいの世代は非常に元気がよい。今でも家族経営で稼動しているワイナリーは多いが、最近は家業がワイナリーでない若者がワイン造りに興味を持って醸造を学び、出身地でない地方のワイナリーに赴くことも珍しくなくなった。これも昨今の日本ワインのブームを押し上げた大きな理由であると思う。

ワインプロジェクト・ディレクターの池野美映さんが赴任してからのリゾナーレでは、こうした各地の造り手を招いたセミナーや、著名なソムリエの公演など様々な催しが展開され、地元やワイン愛好家との交流を図っている。今回は、ワインセミナー、リゾナーレ内レストランでのワインと料理のマリアージュディナー、同ホテル1泊宿泊がセットになったイベントの様子をお届けする。

山梨・小淵沢のリゾートホテル「リゾナーレ」

まずはセミナーのレポートを。こちらは、山梨県甲州市勝沼町にある勝沼醸造の専務取締役・平山繁之さんと、同じく山梨県笛吹市一宮町にあるルミエールの製造部栽培課課長・小山田幸紀さんを迎えての内容となった。

ワインセミナーの様子

勝沼醸造のテーマは、「造り方の違いで、同じぶどう品種でもどのような違いが出るか」というもの。今回取り上げられたぶどう品種は「甲州」。日本が原産の白ブドウ品種である。近年あらゆる国際コンクールに多くのワイナリーがこの甲州種を使ったワインを出品しており、世界各地での評価も年々上がってきている。さてその甲州、いったいどのような特徴があるのだろうか。

  1. 「アルガブランカ ブリリャンテ 2004」
  2. 「アルガブランカ クラレーザ 2007」
  3. 「アルガブランカ クラレーザ」の醸造途中のもの(非売品)

前列中央の白くにごったワインが「アルガブランカ クラレーザ」の醸造途中のもの

1は甲州を使ったスパークリングワイン。ステンレスタンクで発酵させたあと瓶に詰め、その中でもう一度発酵させて泡をつくり出す瓶内二次発酵。フランスのシャンパーニュと同じ造り方なので、泡がきめ細かい。トーストのような香ばしい香りとはつらつとした産が印象深い。

2はやはり甲州種だが、こちらはスティルワイン(発泡していないワイン)。発酵後、澱引きをしないでしばらくタンクに置いておき、その澱の上澄みだけを取り出して瓶詰めをする「シュール・リー」という製法で造る。フランスのロワール地方で見られる製法だが、とりわけ甲州ぶどうにはこの製法が向いているとして、たくさんのワイナリーが採用している。深み、というよりは爽やかで若飲みタイプのワインだが、甲州特有のスモークしたような香りがはっきりと感じられる。

勝沼醸造の専務取締役・平山繁之さん

3は2と同じワインの醸造途中のもので、アルコール発酵が終わってシュール・リーにする前のもの。カルピスのように白濁している。苦味と酸味がはっきりと取れるがそれぞれにバラついていてまとまりがなく、旨みがまだ移っていない段階。

以上、3種類の甲州種による"造り方による違い"をテイスティングしたが、甲州独特の煙っぽさやはつらつとした酸味はどれもよく表れていたように思う。

勝沼醸造は、この甲州種にもっとも力を入れているワイナリーのひとつといっていい。平山さんは「甲州から食事を際立たせるワイン、すなわち飲んでいて疲れないワイン造りをしたい」という。しかも、「清酒に擦り寄ったワイン"和の酒"」を常に意識していると。これにはぶどうの品質はもちろん、醸造テクニックの手腕も大きく問われるところである。