――ポストLTEや4Gの動きも活発化してきました。NSNの取り組みを教えてください
まず2008年12月に、LTEをさらに改良したLTE-Advancedの実証実験を成功させたことを発表しました。3GPPでは、W-CDMA(Release99)の流れとして、パケット通信の効率を上げることで下り通信速度を高速化する「HSDPA」(Release5)、上り速度を高速化する「HSUPA」(Release6)、それらを2×2MIMO(Multiple Input Multiple Output)に対応させ、下り最大28Mbps/上り最大11Mbpsまで向上させる「HSPA+(HSPA Evolved)」(Release7)、フルIP化させ64QAMまで変調方式を多次元化した「LTE」(Release8)といったものがあります。
その先として、4Gが求められており、その中の選択肢として、LTEをさらに進化させたものが「LTE-Advanced」となります。IMT-Advancedといった言い方をする場合もありますが、こちらは4Gという意味合いに近く、それらの通信方式の候補のひとつがLTE-Advancedとなっています。
LTE-Advancedのメリットは、LTEの進化系ですから、すでにLTEを採用することが決まっている通信事業者にとってうまくマイグレーションしやすいことです。特に、すでに、LTEでフルIP化させていますので、ユーザーも同じデバイスで利用できるというのも大きな利点でしょう。
――日本でも2009年にはモバイルWiMAXなどの広帯域無線アクセス(BWA:Broadband Wireless Access)サービスが開始されます。NSNでは、LTEだけでなく、モバイルWiMAXも開発をしていると思いますが、それぞれの違いは
WiMAXも非常に優れた通信方式です。WiMAXはグリーンフィールド(新地)にイチからネットワークを構築する場合に向いていると思っています。
2008年には、アメリカでSprint Nextel社から事業を引き継いだClearwire社がWiMAXをスタートしています。日本では、すでに3Gネットワークがこれだけ普及していますので、それらを活用できるLTEに重点を置いています。
――BWAサービスでは、特にXGP(次世代PHS)などは基地局をたくさん設置することで、マイクロセルを構築することをメリットとして挙げています。フェムトセルの開発の進み具合はどうでしょう
2007年にAirvana社と協業することを発表し、フェムトセルの開発は順調に進んでいます。フェムトセルを導入するメリットは主に2つあります。1つは大きな基地局では届かないデッドスポットのエリアカバー。もう1つは、トラフィックの高い密集地のカバーです。
特に、携帯電話の主な利用場所は自宅や仕事場などの屋内となっているため、そのトラフィックを通常の基地局ではなく、フェムトセルを通して家庭などの固定回線に流せることは負荷分散に役立ちます。というのも、音声通話のトラフィックはそれほど伸びていませんが、データ通信のトラフィックは年間で5倍程度増えているからです。
ただし、フェムトセルにも解決しなければならない問題もあります。本当なら通常の携帯電話サービスとは違う周波数帯を割り当てられればセルの干渉が抑えられるのでいいのですが、日本ではなかなか難しい状況です。
干渉による周波数とエリア設計の問題のほかにも、伝送路としての固定網をどうするかといったこともあります。すでに普及しているADSLを使えば簡単ですが、それで遅延がひどかったりした場合に、ユーザーに満足してもらえるかといったところを見極めなくてはなりません。
フェムトセルに近い方法として、無線LANを使うことも考えられますが、無線LAN網と携帯電話網のハンドオーバーをどうするかという問題もあります。ユーザーの使いやすさを考えた場合には、やはり、フェムトセルのほうが理想的だと考えています。