FXは原則、確定申告が必要ですが、やり方は2つに分かれます。損をしないよう、その違いをきちんと知っておきましょう。
あなたはどのタイプ?(クリックするとそれぞれの申告書の書き方について説明するページに移動します)
・【シーン1】FXで儲かった人の申告~くりっく365編
・【シーン2】FXで儲かった人の申告~相対取引編
・【シーン3】FXで損した人の申告~くりっく365編
・【シーン4】FXで損した人の申告~相対取引編
・【シーン5】取引会社Aで得して、取引会社Bで損した申告
・【シーン6】くりっく365で損して、日経miniで得した申告
今年取引分からは取引明細の税務署提出が義務化。確定申告は必須になる
FX(外国為替証拠金取引)で利益が出たら原則、確定申告を行う必要があります。株や投資信託などと異なり、特定口座を使ってFX会社が税金分を源泉徴収する制度がないからです。ただし、今年(2009年)からは、FX会社の税務署への取引明細提出が義務化されますので、来年以降は特に正確な確定申告が必要。そのためにも、昨年分から申告をして、練習しておくことも大切です。
FXの利益は税法上、先物取引に分類されます。前年の1月1日から12月31日までに決済して確定した利益を、為替差益もスワップポイントも全てまとめて申告します。含み益含み損は申告から外します。ただし、確定申告のやり方は大きく2つに分かれます。
東京金融先物取引所を介して取引をする「くりっく365」なのか、FX会社が直接取引をする「相対取引」なのかです。申告の仕方、税額の計算方法など多くの点で異なっています(下表)。2つの違いを、「税率」「損益通算」「控除」「必要な申告書」の4つの面から説明します。
「くりっく365」VS「相対取引」
くりっく365の税率は一律20%、損益通算のルールにも違いが
まずは税率。くりっく365は申告分離課税方式なので、FXの利益額や給与などの所得額に関係なく、FXの利益に対する税率は一律20%です。一方、相対取引の利益は、雑所得として総合課税されます。サラリーマンなど給与所得者は、給与所得とFXの利益を合わせた課税所得金額で税率が決まります(下表)。課税所得金額が多いほど税率は上がります。
「くりっく365」と「相対取引」の税率比較表
たとえば、課税所得金額が195万円以下だと相対取引は税率15%ですが、くりっく365は税率20%です。195万円超330万円以下だと、どちらも税率20%。330万円を超えると相対取引の税率は30%以上になり、くりっく365の方が有利になります。
同じ商品同士は損益通算できる くりっくは他の先物取引とも可能
利益や損失を他の先物取引と通算できるかどうかにも違いがあります。ただ、先物取引以外の利益とは通算できない、という点は同じで、株、競馬などの損益とは通算できません。
損益通算できるのは、複数のFX会社で取引して、A社で利益を出しB社で損したといったケースです。A社とB社がくりっく365同士、もしくは相対取引同士であれば損益通算が可能です。
半面、くりっく365での利益と相対取引での損失を通算することはできません。逆も同様です。ただし、くりっく365は、日経225先物mini、日経平均先物などの取引所先物取引との損益通算が可能です。
損失が繰り越せるくりっく365、経費が認められやすい相対取引
次は、課税所得金額を減らせる控除面の違いです。くりっく365は損失を翌年以降に繰り越して控除できるという優遇措置があります。その年に控除できなかった損失を翌年以降3年間にわたって、くりっく365などの取引所先物取引で生じた翌年以降の利益から控除できます。相対取引の利益からは控除できません。
一方、相対取引は、控除対象となる経費が認められやすいという利点があります。相対取引はインターネット接続料、金融新聞や専門書などの図書費、交通費などの金額の一部が経費に認めれらる場合があります。しかし、上記費用の全てが経費になるわけではなく、FX取引に直接関係ある一部だけです。
相対取引は申告書Aだけで簡単、くりっくは損した場合も申告を
最後は、申告時に必要な書類です。相対取引の場合は、税務署からもらう書類は申告書A(第一表、第二表)だけ。後は、源泉徴収票とFX会社から交付される1年間の取引損益報告書を用意します。報告書はFX会社の取引ページからダウンロードできます。
くりっく365は提出書類が少し増えて、申告書B(第一表、第二表)と第三表(分離課税用)、そして先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書です。源泉徴収票と1年間の取引損益報告書も相対取引と同様に用意します。くりっく365は損失を繰り越せるため、損した場合でも申告したほうが有利です。その場合は、上記の計算明細書の代わりに、申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)を記載します。