ベンチマーク
PhysXを利用した際のパフォーマンスを、フレームレートの計測結果で見てみよう。ベンチマークに用いたタイトルは先と同様にミラーズエッジ。今回は英語版を用いているが日本語版でもPhysXは利用可能だ。また、計測区間はFlightステージで、そのステージ中でも比較的PhysXが多用されており、かつアクションの少ない(=ヌルゲーマーである筆者でも操作ミスの少ない)チャプターDのなかほど40秒間とした。ここは渡り廊下を走り抜けるシーンであり、ヘリコプターからの銃撃により複数枚のガラスが40秒を通じて連続して破壊される。
検証システムのハードウェア構成は、CPUがIntel Core 2 Duo E8500(3.16GHz)、メモリがDDR3-1333(4GB)、マザーボードがIntel DX38BT(Intel X38 Express)など。グラフィックスカードはエルザジャパンから「GLADIAC GTX 260 V2 896MB」(GeForce GTX 260)と「GLADIAC 998 GT V2 512MB」(GeForce 9800 GT)を、ASUSTeKから「EAH4870/HTDI/512M」(Radeon HD 4870)を拝借した。
SLI PhysXでは、GeForce GTX 260+GeForce 9800 GTの組み合わせを採っている。ソフトウェア構成は、OSがWindows Vista Ultimate SP1(32bit英語版)、Forceware 181.22、PhysX System Softwareは1月30日にアップデートされたばかりの9.09.0121を導入している。
■テスト環境 | |||||
GeForce GTX 260 + 9800 GTX |
GeForce GTX 260 (PhysX:off) |
GeForce GTX 260 (PhysX:on) |
Radeon HD 4870 (PhysX:off) |
Radeon HD 4870 (PhysX:on) |
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CPU | Core 2 Duo E8500(3.16GHz) | ||||
M/B | Intel DX38BT | ||||
Mem | DDR3-1333(1GBx4/9-9-9-24) | ||||
HDD | WD WD3200AAJS-B4A(320GB/7200rpm/8MB) | ||||
OS | Windows Vista Ultimete SP1 32bit(E) |
まず前段階として、GeForce GTX 260とRadeon HD 4870をPhysXオフの状態(グラフ1)を比較してみた。
まずPhysXオフ。最大FPSと最小FPSとの差が40FPSと大きいため、今回平均FPSの算出には相乗平均を用いているが、これを見ると両製品にそこまでの差は無いように見える。ただRadeon HD 4870では、最大FPSと最小FPSの差が激しく、その点プレイ中にスムーズさが欠けるところがあった。これはタイトル毎のGPUへの最適化度合いにも関わってくるだろう。とりあえずここではほぼ同じ程度の平均FPSが得られるという点に注目してほしい。
次はPhysXオンでそれぞれのカードを比べてみた。GeForce GTX 260の場合はGPUによるPhysX、Radeon HD 4870の場合はCPUによるPhysXとなる。
一目瞭然だが、CPUによるPhysXはFPSを大きく落としゲームにならない。それも先のFlybyよりも深刻だ。一方でGPUによるPhysXでは最小FPSでも30FPSを上回り十分快適にプレイできるレベルを保っている。物理演算をGPUで処理することの効率の高さ、そしてPhysXタイトルでのGeForceグラフィックスカードの優位性は明確だ。ただし、GeForce GTX 260に関してPhysXオンとオフとを比較すると、平均FPSで15FPS、最大FPSで22FPS、最小FPSで8FPSほど落ちている。やはりGPUが一部PhysX処理に割かれるぶん、若干フレームレートが落ちるということもはっきりした。
最後にGeForce GTX 260+GeForce 9800 GTによるSLI PhysXと、GeForce GTX 260のPhysXオン/PhysXオフとを比較してみよう。
SLI PhysXは、ほぼPhysXオフのGeForce GTX 260のフレームレートに迫り、PhysXオフの状態と変わらぬプレイ感覚で、PhysXオンのリアルなゲーム世界が楽しめることが示された。もちろん、PhysX側のGPUにもそれなりのパフォーマンスが求められることは当然だが、ゲーマーであれば、おそらくグラフィックスカード買い替え前に利用していたカードもそれなりの高性能GPUだったことと思われる。そうしたレベルのユーザーであれば、SLI PhysXも現実的な選択肢となるだろう。あるいは、低価格となった頃合いを見計らって1世代古いカードを追加購入するという方法も採れるだろう。
まとめ
一度PhysXオンの映像を見てしまうと、PhysXオフの映像はどこか味気ない。そう感じることだろう。ゲームにおける物理演算エンジンの導入はそうした意味で意義のあるものであると思う。もちろん、物理演算エンジンはPhysXだけではない。他のエンジンが今後どのように動くのか、この点には注目しなければならないが、とりあえずPhysXは先手を打ったと言って良い。また、SLI PhysXはリアルなゲーム世界を実現しつつ、PhysXオンによるフレームレート低下を抑えることができる点で、ユーザーの環境、懐具合によってはこちらも有望な技術に見える。
まずはPhysX対応タイトルでその機能をオンとしてみて、それで心許ないならば1世代古いカードを引っ張り出す、あるいは適度なカードを調達するということになるだろう。高性能なシングルGPU、SLI、SLI PhysXと、グラフィックスカード構成の選択肢はさらに広がった。悩ましいところではあるが、その悩ましさもまた自作PCの楽しみを広げるものではないだろうか。
PhysX対応タイトルの数が課題だが、こればかりはゲームデベロッパーの動向、そしてPhysXを保有するNVIDIAの営業努力にも関わってくる。ユーザー視点からすれば、ゲームをよりリアルに、より快適なFPSで楽しむというのは自然な欲求だろう。今後の盛り上がりに大いに期待したいところである。