人型ロボットが新産業を創出
神奈川県商工労働部ならびに、かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会は、パシフィコ横浜にて、ロボット関連の知的財産(知財)の企業活用、産学連携をテーマに「ロボット知財フォーラム in かながわ」を開催した。
特許庁 特許審査第2部 生産機械 主任上席審査官である西村泰英氏 |
基調講演には、特許庁 特許審査第2部 生産機械 主任上席審査官である西村泰英氏が「ロボット知財戦略・技術開発の方向性について ~特許出願技術動向調査(ロボット)」と題し講演を行った。
西村氏は、「どんな技術分野に属するのが"ロボット"と言うのかの分類が分かりにくい。そのため、特許としてもロボットという明確な区分けをしておらず、要素技術の集合体と見ている」と、特許の視点ではロボットという定義が難しいとし、「ロボットと知財の融合結果が今日のテーマ」(同)とした。
ロボットの用途の多くは産業用だ。数年前から人型ロボットが一般社会の中に登場するようになったが、「今のところ、ああしたロボットが何をするわけではない。そのため、客寄せの意味合いが強かったり、ホビーとしての側面が強かったり、おもちゃの一種として扱われている」(同)と指摘、「ただし、新たな産業を創出していく上で、こうした取り組みは欠かせない」(同)とし、「直接産業にはなりにくいが、その技術は新産業へと確実にフィードバックされ、新たな分野が生み出されていく」(同)と期待を述べた。
経営戦略に知財を融合
近年、企業の経営戦略として従来の"事業戦略"や"研究開発戦略"に加え、"知的財産戦略"を取り入れてくる日本企業が増えてきている。これは、「企業経営において、単なる事業戦略の立案を行うだけではなく、次のビジネスの立案戦略に組み込まれた研究開発を行う必要があるため」(同)とし、そうした分野において、「知財の"研究開発時""出願時""審査請求時"の先行技術調査」や「特許マップ作成による他社の動向調査」が重要になるとした。
また、このほか「特許取得の選択と集中による量から質への転換」や「権利の有効活用(自社独占、ライセンス供与、模倣品対策など)」も知財戦略としてあり、20世紀型の経営戦略と今の経営戦略が違っている点として、「何でも特許として出すのはあまり得策ではないという認識が広まり、"特許出願を行うか、営業秘密として自社で管理するかの判断"」(同)が求められるようになっており、このような5つの項目が知財戦略の柱になっているとした。
特に最後の出願か自社管理かの判断は、特許出願を行えば、その技術は公開されることとなるため、各社がどこまで技術を進めているかなどの比較に用いることが可能である。そのため、経営判断として「自社の研究開発の方向性が正しいのか、どの企業との連携が得策なのか、などを判断できるようになる」(同)という。
なお、「特許の情報は5~10年先に成り立つ技術として捉えると、将来予測のドキュメントとしては最適なもの」(同)であり、経営戦略的に次の市場を予測するのにも役に立つという。