佐藤氏がこれまで紙を積層して造形を行なうにあたって使用しているのは、「KATANA」というラピッドプロトタイピングシステム(=高速造形装置)と言われるもの。これまでパッケージデザインなどの試作を行なう上で使用してきたものだそうだ。3D-CADソフトからデータを送り、あらかじめ接着剤の付いた紙がデータどおりにカットされ、最後に設定した切り込み線から不要な部分の固まりを取り外せばCADソフトでデザインしたとおりに紙でできたプロトタイプモデルが現れてくる。"高速造形"とうたっているだけあり、大変短時間で試作を繰り返す事もできる。

最近ではさまざまな素材を使った3Dプリンタが存在するが、紙を素材に使っている事について佐藤氏は、「紙は加工も難しくありませんし、処理する場合も無害だということがあります。なんといっても、僕はグラフィックデザイナーですので、もとより紙を使って仕事をしてきました。紙の手触り、素材感に可能性を感じています」と語った。

佐藤卓さん。会場の巷房がある奥野ビルは、手動扉のエレベータがある銀座でもっとも歴史のあるビルだ