いつにも増して華やかな発表会だったが、端末自体の発表として見ると、昨年同時期に行われた発表会では派生モデルを除いても全13機種を投入していたのに比べ、今年は同7機種と約半分。中身を見ても、昨年は「インターネットマシン 922SH」「FULLFACE 2 921SH」といった、携帯電話の新たなスタイルを打ち立てようとした意欲にあふれるものから、「コドモバイル 820T」「かんたん携帯 821T」などの特定層を狙ったもの、「X02NK」「X03HT」といったスマートフォンまで、実に多彩だった。それに対し今年は、それぞれ完成度は高いと考えられるが、既に従来製品や他社製品で定評のある機種の後継が中心で、ソフトバンクにしては保守的なラインナップとなっている。
派生モデルを除くと今期の市場投入は7機種。内容的にもこれまでに比べ保守的な印象の機種が中心だ(発表資料より) |
携帯電話業界にとって1年で最大の商戦期となる春商戦を控えるほか、2006年10月の「新スーパーボーナス」導入から2年以上が経過し、そろそろ新しい機種を、と考えるユーザーが増加するタイミングで行われた製品発表として見ると、昨年の契約純増数が1位となったソフトバンクとはいえ、昨今の携帯電話販売不振の影響からは逃れられない様子だ。
また、他社に比べARPU(Average Revenue Per User: 1加入者あたりの収入)が相対的に低いソフトバンクには、かねてARPU引き上げ策が求められていた。今回のS-1バトルを楽しむにはパケット定額制への加入は不可欠であり、ユーザーから好評を得られれば、ARPUの向上に貢献することになる。それを考えれば、多大な調達費用を要する新機種を多数用意することに比べ、2億円のコンテスト賞金は「安いもの」ということなのだろう。
孫社長は携帯電話事業の収益性を高めていく方策について、これまで端的に「まずはユーザーを増やす。次にARPUを増やす」という2段階の戦略で説明していた。現在のところ、ユーザー拡大の手をゆるめる姿勢はまだ見せていないが、今回の発表会を経て、そろそろ次の戦略が見える時期が近づいてきたのかもしれない。