「ナチュラル」を標準に

K-mの絵づくりについて。特に解像力が高いとか、特徴的な絵づくりというわけではない。むしろ、絵づくりがカリカリしていないぶん、どこかホッとするところもある。日陰や曇りで若干青が浮くこともあるが、それほど極端ではなく、誰にでも安心して使える絵づくりといえる。ただ、フレーム内で暗い部分が多いと、全体にもったりとする傾向が感じられた。心持ち明るめの撮影を心がけるといい結果が得られるはずだ。

カラーモードの「カスタムイメージ(画像仕上り)」は全部で6種類。「鮮やか」(標準)、「ナチュラル」、「人物」、「風景」、「雅(MIYABI)」、「モノトーン」から選択できる。各モードでの色の変化はそれほど大きくない。しかし「鮮やか」では色が乗り過ぎるように感じた。「ナチュラル」を標準と考えるのがオススメだ。「人物」は青を抑えて人肌をきれいに見せ、「風景」は非常に鮮やかな色となる。ペンタックス独自の「雅」は和のテイストを美しく、個性的な表現で楽しむモードとのことで、実際にはマゼンタや緑が強調される。

ただ、なぜか取扱説明書に各カラーモードに対する説明がない。「雅」という名から侘寂(わびさび)の地味な色と考える人もいるだろう。どういったシーンでモードを選択するか、その結果どういった色になるのか、などの説明は必要だと思う。

カスタムイメージは情報表示画面のほか、撮影メニューからも設定できる

カスタムイメージは上段に各モードが並ぶ。スパイダーチャートがそれに合わせて変化する

カスタムイメージの微調整。彩度、色相、コントラスト、シャープネスが調整できる

カスタムイメージを変更し、色の変化を見た。左から「鮮やか」「ナチュラル」「人物」。[DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 10M+S.Fine(JPEG) / 31mm(46mm相当) / プログラムAE(F4、1/15秒) / ISO 100/WB:オート]

同上。左から「風景」「雅」「モノトーン」

カスタムイメージで、日陰の人工物の変をチェックした。左から「鮮やか」「ナチュラル」「人物」。[DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 10M+S.Fine(JPEG) / 26mm(39mm相当) / プログラムAE(F4、1/20秒) / ISO 100 / WB:オート]

同上。左から「風景」「雅」「モノトーン」

白飛びを抑える「ダイナミックレンジ拡大」

K-mにもK20Dなどと同様の「ダイナミックレンジ拡大」機能がある。これをオンにすると最低感度がISO 200になる代わりにダイナミックレンジが拡がり、白飛びなどが抑えられる。試してみたところ確かに効果が確認できた。ただ、これを設定するのがISO感度の画面からというのが気になった。最低ISO感度が変わるためにここから設定するのだろうが、「どこで設定するんだけっけ?」と何度か探してしまった。通常の撮影メニューなり、カスタムメニューに置いたほうが自然だと思う。

「ダイナミックレンジ拡大」が主に白飛びを抑えるのに対し、「シャドー補正」は暗部を持ち上げて自然に見せたり、ストロボで発生する影を弱くする働きがある。設定はカスタムメニューから行なう。しかし、これもなぜか取扱説明書に説明がない。

ISO感度のメニューで露出補正ボタンを押すとダイナミックレンジが拡大される

下の白い家と公園の画像のヒストグラムを比較したもの。白い家の画像では明るい側(右側)の貼り付きが少なく、公園の画像では暗い側のカーブが変わっているのがわかる

左が「ダイナミックレンジ拡大」オフ、右がオンで撮影したもの。[DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 10M+S.Fine(JPEG) / 55mm(83mm相当) / マニュアル(F5.6、1/10秒) / ISO 200/WB:オート / CI:ナチュラル]

左が「シャドー補正」オフ、右がオンで撮影したもの。[DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL / 10M+S.Fine(JPEG) / 18mm(27mm相当) / プログラムAE(F3.5、1/30秒) / ISO 100 / WB:オート / CI:鮮やか]

遊べる「デジタルフィルタ」。ソフトも使いやすい

K-mの特長のひとつは「デジタルフィルタ」を充実させていること。おもちゃのカメラで撮影したような「トイカメラ」、全体をぼかしたような柔らかい雰囲気になる「ソフト」、古い写真のようになる「レトロ」など、多くを用意している。撮影後にレタッチソフトで同様の加工ができなくもないが、簡単にカメラだけでこういった処理ができるのは楽しいものだ。K-mでは撮影時に6種類、撮影後の加工では13種類(+カスタム)という多くのフィルタを用意している。

初心者用カメラということなので、付属ソフトにも触れておく。K-mに付属する画像ブラウザは「PENTAX PHOTO Browser 3」。これがとても使いやすい。シンプルなブラウザだが、となりの画像に移動すると撮影情報(Exif)のうち変更された項目だけ色が変わるなど、プロでも便利な工夫がされている。もうひとつのRAW現像ソフトの「PENTAX PHOTO Laboratory 3」もわかりやすくていい。難点はRAWデータしかレタッチできないこと。機能が限定されてもかまわないので、JPEGの補正ができるようになれば、とても便利だと思う。

ホワイトバランスでは蛍光灯が沢山用意されている。ホワイトバランスオートでもブルー←→アンバー、グリーン←→マゼンタの2軸で微調整が可能。左はホワイトバランスによる色の変化を比較したもの。[DA L 50-200mm F4-5.6 ED / 10M+S.Fine(JPEG) / 105mm(158mm相当) / プログラムAE(F4.5) / ISO 800 / CI:ナチュラル]

画像のイメージを変更できる「デジタルフィルタ」。一部は撮影時にも使用できる。中央は「トイカメラ」、右は「ソフト」

同上。左から、「色抽出」、「イラスト」、「セピア」

画像ブラウザの「PENTAX PHOTO Browser」。素直な作りで扱いやすい

RAW現像ソフトの「PENTAX PHOTO Laboratory」。JPEGには対応していないが、これもわかりやすくていい