OTOYとグラフィック・スーパーコンピュータを共同開発
新たなコンピューティングの波となりつつある「クラウド」にも言及した。Webブラウザから利用でき、コスト削減、共有やデータポータビリティなどを実現するのがクラウド・コンピューティングの長所である。ユーザーインターフェイスの向上とともに対応アプリケーションの幅が広がっている。Google CEOのEric Schmidt氏は90%のデスクトップ・アプリケーションがクラウドに移る可能性を予言しているそうだ。その実現の可能性はともかく、Schmidt氏ですら10%を残している理由の一つに、高度なグラフィックス処理が求められるアプリケーションが含まれるのは間違いない。
しかしGPUがTFLOPSの演算性能を備える今日では、10%をめぐる状況が変わっているという。再びUrbach氏が登場し、その例として3つのデモを披露した。まずリモートマシンで再生している映画「ハンコック」のBlu-rayムービーをストリーミングし、Webブラウザを通じて小型デバイスで高画質な映画を鑑賞。次に街の風景をYukonベースのノートPCでリアルレンダリング、また別のPCではWebブラウザからCGの街を操作して見せた。これらの背後にはAMD Fusion Render Cloudというクラウドシステムが存在する。クライアントの処理機能の不足分をクラウドが補足するという訳だ。これにより、ディスクよりも小さなデバイスでBlu-rayムービーを楽しむというような新たな利用体験が広がる。Urbach氏は、これを「HDクラウド・コンピューティング」と呼んでいた。最後にノートPCのWebブラウザで、Electronic Artsのシューティングゲーム「Mercenaries 2: World In Flames」をプレイした。「遊んでいる感覚はデスクトップと変わらない」(Urbach氏)という。
リッチなグラフィックスのゲームを普及帯のPC、さらにはネットブックや携帯電話に広げていければ新たなゲーム人口を開拓できる。Electronic ArtsのチーフクリエイティブオフィサーRichard Hilleman氏は、デモで示されたクライアントを問わないゲームシステムは「文字通り"ゲーム・チェンジャー"になる」と期待していた。
AMDとOTOYは、Fusion Render Cloudをベースにしたグラフィック・スーパーコンピュータを2009年に共同開発するという。一時ほどの優位性はなくなったものの、AMDの強みとリソースを考えるとHDクラウド・コンピューティングは理にかなった一手である。ユーザーは高価なマシンを揃えなくても、リッチなコンテンツを楽しめる。まさに景気減速というストレスの中から生まれた賢いソリューションという感じだ。