景気低迷時の乗り切り方が成長のカギ
CESでは基調講演のほか、インダストリーインサイダーシリーズという企業リーダーによる講演セッションが用意されている。以前は展示ホール内で行われていたが、CES会場の規模拡大とともに基調講演会場だったヒルトンシアターでの開催となり、内容もグレードアップされた。今年のスピーカーはDisney-ABC Television GroupプレジデントのAnne Sweeney氏、Activision Publishing CEOのMichael Griffith氏、FCCチェアマンのKevin Martin氏など。基調講演と比べて遜色のない顔ぶれである。そのインダストリーインサイダーのオープニングを、今年はAMDの社長兼CEOであるDirk Meyer氏が務めた。ここ数年は苦戦続きのAMDだが、新CEOの下で製造部門の分社化を含む大胆な改革を進めている。景気減速の影響がテクノロジー産業全体に色濃く影を落とす中、回復への道を歩み始めたAMDに注目が集まっている模様だ。
ShopperTrackの最新データによると、2008年米ホリデーシーズンのオンラインストアのトラフィックは前年同期比16%減、売上は約3%減だった。「今が困難な時期であるのは疑う余地がない」とMeyer氏。その上で同氏は、「困難な状況を乗り切るために調達の方法やパートナーとの関係を考え直すことは、特にテクノロジー産業の住人にとっては潮目を変えるチャンスになる」と指摘した。「ストレスで年老いてしまう人もいるが、ストレスを糧に賢さを身につける人もいる」と同氏。それはAMDの提唱する"Fusion"の効果の一つである。
AMDはCESを待たずに、45nm SOIプロセスを採用したデスクトップ向けクアッドコアCPU「Phenom II」、超薄型ノートPC向けのプラットフォーム「Yukon」を発表した。これは消費者も注目する家電トレードショーであるCESにおいて、チップではなく、ユーザーの利用体験の向上に焦点を当てるためだ。「39年の歴史を持つチップ企業のプレジデントとして、ムーアの法則やトランジスタ数などについて語ることもできるが、それは我々が考える"前進"ではない。コンシューマがテクノロジーに求めているのは、より速く、より大きくではない。双方向性や接続性の改善など体験の向上である」とMeyer氏。その実現にはパートナーとの協力が欠かせない。そのため講演はMeyer氏が主張するのではなく、パートナー企業のゲストを壇上に招き、AMDとのコラボレーションについて語り合う形で進められた。