NVIDIAが、「Intel Core i7」プロセッサ向けハイエンドチップセット「Intel X58 Express」に対し、同社のマルチグラフィックス技術「NVIDIA SLI」のライセンス提供を実施していることは既報のとおり(詳細はこちらの記事)。これは「ネイティブSLI」と呼ばれており、市場にもネイティブSLI対応のX58マザーボードが投入されている。そこで今回は、実際にコレがどの程度のパフォーマンスを実現してくれるのかを、3枚の「NVIDIA GeForce GTX 280」を使って試してみたい。

NVIDIAの「GeForce GTX 280」。今回はこれを3枚用意し、「Intel X58 Express」のネイティブSLIを試してみる

まずは"ネイティブSLI"……"Intel X58 ExpressにおけるSLI"のサポート概要をおさらいしておきたい。ポイントは、各PCI Expressスロットでのレーン数(帯域)の振り分けである。最初に一般論として、ご存知のとおり、例えばスロット形状がPCI Express x16の"カタチ"であっても、そこに割り当てられるレーン数は、必ずしもPCI Express x16のフルレーンとは限らない。このあたりはチップセットの備える総レーン数との兼ね合いで決まるのだ。

NVIDIAがサポートする「Intel X58 Express」における「NVIDIA SLI」のレーン数振り分けの図。ただ、実際には、マザーボードによっては異なる振り分けを実現しているものも存在する

マザーボードのPCI Express x16×n本のスロットに対して、1本のx16スロットしか使わないシングルGPU構成ではx16のレーン数を全て使えるが、マルチGPU構成になると、レーン振り分けがそれぞれx8であったり、x16とx8の組み合わせになったりする。一方で全スロットでx16レーンが利用できるものや、そもそもスロット形状とレーン数が一致しないこともあるので、少しだけ複雑なのだ。これはチップセットの種類や、マザーボードのモデルによっても仕様が異なる場合があるので、メーカーサイトなどで確認しておくと良いだろう。

しかしながら、そういった注意は必要なのだが、x8レーンであろうとPCI Expressの帯域は非常に"広い"ので、この広帯域を使い切ることは滅多に無く、実はそれほど気にする必要は無かったりする。もちろん、データ転送の帯域が狭い分、ベンチマークテストの結果やシビアな環境での処理速度にはそれなりに影響するのだが、経験上、現在の一般的な環境で、x16レーンとx8レーンの帯域幅の違いを"体感"することは稀である。

さらに別途「nForce 200 SLI」のチップを追加し、x16フルレーンで3-way以上のSLIが可能なマザーボードも存在する。ただ、その分のコスト増が悩みどころ

さて、話を戻してIntel X58 ExpressのネイティブSLIの場合。冒頭に掲載した図でもわかるとおり、3-way SLIなど3枚以上のグラフィックスカードを利用するとレーン数が制限されてしまう。ただ、個人的には先に述べたように、その影響を体感することは稀であり、どちらかと言えばマルチグラフィックスによる快適さの向上の方が重要だ。フルレーン対応のX58マザーボードはその分割高になってしまうだろうから、筆者としては、余程なことでも無い限りネイティブSLIでも十分ではないかと思う。