操作方法はまったく同じ、好みや歌わせたい曲に合わせて選ぶ

先に述べたように今回紹介している3製品のエンジンはVOCALOID2と共通だ。そのためどの製品をインストールしても操作のためのインタフェースはVOCALOID Editorというソフトを使う(図7参照)。そもそもVOCALOID2はMIDIという仕組みでパソコンを演奏する。VOCALOID EditorはMIDIでは一般的なピアノロールという形式。まずメロディを音符として入力し、続いてその音符に歌詞を付けるというのが基本的な操作手順だ(図8~9参照)。まったく知識がないと、ここでちょっと戸惑ってしまうかもしれないものの、一度マニュアルを読みながら入力してみれば操作そのものはシンプルだ。

図7

操作画面は3製品とも共通でVOCALOID Editorを使う。キャラクターイラストなども表示されないので、声以外はまったく同じだ

図8 図9

まずは鉛筆ツールやラインツールを使い、メロディを音符として入力していく

入力した各音符をダブルクリックすると文字入力可能な状態となるので、ひとつの音符に歌詞一音を入力する

ここで気になるのは、本当に3製品とも" VOCALOID Editorは同じものなのか"ということだろう。答えは、まったく同じものである。厳密にいえばインストールディスクからインストールされるバージョンが微妙に異なり、最も発売時期が遅かったがくっぽいどはシステムバージョンも2.0.8.3Jと最も新しいバージョンがインストールされているが、ユーザー登録すれば各社のWebからさらに新しい最新バージョンが無料でダウンロードできるので、それをインストールすれば同じになるのだ(図10参照)。

図10

「がくっぽいど」インストール後のバージョン表示。製品によりマイナーバージョンは異なるが、ユーザー登録後にアップデータをダウンロードできる。不具合などが解消されているので、インストール後にアップデートしておいたほうがよいだろう。なお執筆時点での最新バージョンは2.0.10.1J

なお1台のパソコンに複数のVOCALOID2をインストールした場合は、1本のソフト上で簡単に声を切り替えて使うことが出来る(図11参照)。VOCALOID2では複数のトラックを使って合唱も出来るので、新しいソフトを追加してシステムアップすることも可能というわけだ。 では各製品の声そのものはどうだろうか。まず初音ミクと鏡音リン・レンact2はどちらも女性のプロ声優の声をベースとしているが、初音ミクは女性ボーカルで、鏡音リン・レンact2は女性の「鏡音リン」と男性の「鏡音レン」というふたつの歌声を切り替えて歌わせることができる。それに対してがくっぽいどはGacktの声がベース、つまり男性が男性ボーカルを演じているためなのか、先の2製品に比べると高域よりはやはり低域を中心とした歌に向いている印象を受けた。

図11

複数製品をインストールしている場合、ウィンドウ下側の歌手エリアで歌手を変更できる。曲中でチェンジするだけでなく、複数トラックを使えば同時に歌わせることも可能だ

またVOCALOID2は基本的にはどんな歌でも歌わせることが可能だが、音符と歌詞を単純に入力しただけのいわゆる"ベタ打ち"では不自然に感じてしまうような曲もある。いわばそこが作り手のテクニックの見せ所で、上級者は打ち込んだ後にパラメータを細かく調整したり、DAWのエフェクトを使って曲を作りこんでいく。ただ、最初からその作り込みを完璧にやることは難しいだろう。数曲ベタ打ちで試したところ守備範囲が広く感じたのは初音ミクだった。ここに第1弾でありながらいまだに人気が高いロングセラーの理由があるのかもしれない。がくっぽいどはやはり声域が低く、男性ボーカル曲向けだがそこに気をつけていればわりと自然に歌わせることができる。CDや音楽番組でお馴染みの、あのGacktの声がパソコンから出力されるというのは、かなり新鮮だった。鏡音リン・レンact2は1本のソフトで男性・女性ボーカル両方使えるのでお得感がある。ただメジャーバージョンアップしたact2でかなり改善されたとはいえちょっと癖があり、ベタ打ちで歌わせるには厳しいフレーズもあるようだ。

もっとも声質を文字にするのは難しい。各社の製品ページには各製品を使って制作されたボーカルサンプルが公開されているので、そちらを聴いてお気に入りのソフトを選ぶことをおすすめしたい。