CPU、GPU、SpursEngineの現在の棲み分け、というのが見えてきたのが協賛各社のプレゼンテーションだ。トムソン・カノープス、Loilo、ペガシスという3社は、以前グラフィックスチップベンダーが主催のユーザーイベントでは、それぞれGPGPUによるアクセラレーション機能の取り組みを紹介している。今回はこれら各社がSpursEngineへの対応を表明した。GPUを用いたアクセラレーションでは、エフェクトやトランジション、あるいはLoiloのようにUIの面に活用しているが、SpursEngineを用いたアクセラレーションは主に出力の段階で利用される。

トムソン・カノープスのSpursEngine搭載カード「FIRECODER Blu」。アップコンバート機能で高速なSD→HD変換が可能なほか、エンコード・デコードも高速化

ノンリニアビデオ編集ソフトウェアEDIUS Pro 5での出力対応を予定

既に「FIRECODER Blu」を発売しているトムソン・カノープスは、SpursEngineを活用することで「HD変換のみならずSDでも"もっと速い"」とアピール。現時点では、製品同梱の「FIRECODER WRITER」に対応しているのみだが、将来の構想としてEDIUS Pro 5との連携を構想しているとのこと。これが可能となれば、GPUfxがトランジションをGPUでアクセラレーション、さらに出力時のエンコードではSpursEngineがアクセラレーションするという「トータルで速い」映像編集アプリケーションとなる。なお、Loiloの「LoiLoScope」、ペガシスの「TMPGEnc Xpress 4.0」でも、それぞれ出力時のエンコードをSpursEngineで高速化するというプランを語った。

LoiloScopeはSpursEngineによる出力に対応することで「HDビデオ編集が未だかつてない速さ!!!」とアピール。アップデートという形で対応し、時期は来春~夏頃ではないか、とのことだ

ペガシスは、CPUへの最適化とともに、GPU、SpursEngineのような専用ハードなどと合わせて「マルチフロントエンド」を目指す。SpursEngine対応は09年第1四半期の見込み

左がCPUによるソフトウェアエンコード、右がSpursEngineによるエンコード。既に進捗ゲージで大きな差が見られる

さらにNVIDIA GPUによるCUDAとSpursEngineの同時利用もデモンストレーション。それぞれが得意な箇所をアクセラレーションさせている

サイバーリンクは同社のHD対応ビデオ編集ソフト「PowerDirector 7」を用い、SpursEngineの性能を紹介した。そのデータによれば、同じソース映像をトランスコードするのに、ソフトウェアエンコード(CPU)では4分52秒、CPU負荷は91.5%要したのに対し、SpursEngineを用いた場合では1分22秒、52.6%とCPU負荷も所要時間も大幅に短縮、削減している。

サイバーリンクもソフトウェアエンコードとSpursEngineとを比較したデータを紹介

今後の展望として、スポーツ映像を解析する「MagicSports」にSpursEngineを活用し、これをリアルタイムで実行するといったプランを紹介、これを「新しいソリューション」の可能性としている

CPUとSpursEngineに加え、GPUとも比較し、さらに消費電力に関するデータも紹介したのがテクノアソシエーツ。デュアルコアCPUのPCをベース構成として、CPUをクアッドコアにアップグレードしたCPU強化PC、CPUはそのまま高性能GPUを搭載したGPU強化PC、そしてCPUはそのままSpursEngineを搭載したSpursEngine搭載機を用意し、エンコードに要する時間とCPU負荷、消費電力などを計測、紹介した。このデータによれば、CPU負荷、所要時間ともにSpursEngineが優秀な成績を収めているほか、消費電力面でもGPU、CPUを抑えていちばん少なかったとのこと。

テクノアソシエーツによるベンチマークの使用機材

消費電力の比較。左からCPU強化PC、GPU強化PC、SpursEngine搭載機

所要時間と消費電力を総合し、エコロジー性能を割り出したデータ

CPU、GPU、SpursEngineでそれぞれのメリット、デメリットを示した