十二分に期待できるWindows 7
最後にWindows 7に用意されたアプリケーションや、語り損ねたシステム周りの新機能にも注目してみよう。以前から噂されていたように、Microsoftペイントとワードパッドのユーザーインターフェースには、Microsoft Office 2007から標準搭載された「リボン」が使用されている(図33~34)。
図33: Windows 95時代から大きく変わらなかったMicrosoftペイントのユーザーインターフェースは、リボンの導入により大きく変更されている |
図34: 同じくWindows 95時代から同じユーザーインターフェースを使用していたワードパッドも様変わりしている |
また、Windows MailやWindowsムービーメーカーの搭載は廃止され、Windows Live Mailなど、既存のWindows Liveアプリケーションを使用することになる。以前からMicrosoftのオンラインサービス事業部は、Windows Live Messengerをはじめとするネットワーク系ツールの提供を、「Windows Live」ブランドとして行なってきた。それらをWindows OSと密接に連動させることで、Windows 7の開発コストや期間を削減するのが目的と思われる。無償使用可能な電子メールクライアントは、単独でもMozilla ThunderbirdやウェブアプリケーションならGoogleメールなど数多くの選択肢があるため、ユーザーが取捨選択できる幅が広がるのは、Windows OSに慣れたユーザーにはありがたい(図35)。
図35: コントロールパネルなどから呼び出す「Getting Started」には、Windows Liveアプリケーションを呼び出すリンクが用意されている。ここからWindows Live Mailなどを導入すればよい |
システム関係で注目したいのが、メモリ管理方法の変更。Windows Vistaは実装する物理メモリの空き領域をキャッシュとして確保するため、空き領域はほぼ皆無になってしまう。もちろんパフォーマンスダウンに直接つながるわけではないが、不評だったのは事実だ。そのためWindows 7ではメモリ管理を見直し、非力なNetbook(ネットブック)でも動作するように設計し直された(蛇足だが、PDC2008ではネットブックを用いたWindows 7のデモンストレーションも行なわれた)。
前述のとおり、物理メモリを4GB搭載したコンピュータにWindows 7をインストールしたが、タスクマネージャで使用しているのはキャッシュを含めて約2GB。ちなみに同一環境でWindows Vistaを起動した場合、4GB(32ビット版では約3GB)をフルに使用し、空きメモリは数MBとなってしまう(図36)。
まとめ
以上で、プリベータ版の時点で判明しているWindows 7の機能紹介を終えるが、このほかにも数多くの改良点があり、すべてを紹介しきれなかったことをお詫びしたい。機会があれば2008年内に登場するであろうベータ版で、より多くの情報をご報告させていただきたい。さて、早足でWindows 7の新機能・改良点を見てきたが、より強く感じたのが、Windows VistaからWindows 7へのバージョンアップは、Windows 2000からWindows XPへのそれと大きく類似している点だ。
Windows 2000→XPの時は、Lunaインターフェースの導入やNTFSの改良、マルチプロセッサのサポートなどが行なわれた。一方、Windows Vista→Windows 7では、256までのマルチプロセッササポートや、デスクトップユーザーインターフェースの改良、各DirectXコンポーネントの改良および実装が行なわれる予定である。
一見すると地味なWindows 7だが、かゆいところに手が届くような改良が各所に加えられ、現在の開発ポリシーのまま進めば、Windows Vistaで不評だった欠点を確実に埋め直してくるだろう。現在Windows Vistaを使っている方はもちろん、Windows XPを使い続けている方は、Windows 7に期待を寄せても"今度は"裏切られることはなさそうだ。
阿久津良和(Cactus)