レースオフィシャルは全7種類
続いては、レースオフィシャルについて紹介。大別して、コース委員、計時委員、技術委員、ピットグリッド委員、パドック委員、救急委員、事務局の7種類がある。コース委員は、テレビにもよく映る、フラッグを振っているスタッフのことだ。コースの監視を行うのが主な役目で、コース脇に設置されたポスト上が作業場。危険が発生した時にイエローフラッグを振るといった旗振りによってドライバーにさまざまな状況を伝えるほか、アクシデントやルール違反が発生した場合に、それについて競技長に報告を行う。また、コースの清掃も担当している。安全のため、真夏でも富士スピードウェイ支給のオレンジ色のツナギとヘルメットを身につけ、時には両手でフラッグを振り続けるなど、かなり体力が必要。しかし、最も観客や視聴者の目につくところにおり、花形といえよう。なお、体験会の後半は、参加者が全17ポストに分かれて実際にコース委員の作業を見学。フラッグを振ったり、コース清掃を行ったりしたので、それはまた後ほどお届けする。
計時委員は、タイムを公式に計測して、レース後に発表されるリザルト表を作成するのが主な仕事だ。上はフォーミュラ・ニッポンやSUPER GTから、下はカートまですべてのレースの計測を担当している。F1に関しては、どのレースでも共通のシステムが使われているため、計時委員の作業はない形だ。計時の仕組みは、富士スピードウェイの場合、公認のセイコー製プリンティングタイマを使用している。コントロール/フィニッシュライン上に設置されている光電管式センサを通過することで、プリンティングタイマ上に通過タイムが記録される形だ。また、車両にはトランスポンダが搭載され、富士スピードウェイ特有の計時システムとして、同ラップでコントロール/フィニッシュラインを通過した際にだけ、トランスポンダの通過差を使用して個々の車両の通過タイムを導き出している。ほかのサーキットでは、あくまでも同ラップは同タイムとして扱い、トランスポンダは順位判定のみに使用する形だ。こうしたシステムにより、1万分の1秒まで計時できるようになっている(リザルトは1000分の1秒までを表示)。また、コントロール/フィニッシュライン上に高性能カメラが設置されており、僅差のフィニッシュとなった場合も確認が容易になっている。また、完全に機械に頼っているわけではなく、故障などの可能性も考慮し、計測システムをチェックする要員も置く念を入れた体制を取っている。パソコンが得意、細かい作業が好きという方向き。
技術委員は、車両の安全面や改造内容が規則に合致しているかをレースの前後に検査する車両検査員(車検)と、レース中の燃料補給などのピット作業を監視する補給観察員(ピット監視)の2種類がある。車検はカートからF1までありとあらゆる車両をチェックするので、それぞれの車両規則を頭に入れる必要があり(すべては無理としても、レギュレーションブックのどこを見れば確認できるかなどは覚えておかないとならない)、責任は重大。時にはエンジンをバラして中までチェックするなど、専門的な知識も必要なので、さすがに知識も作業経験もゼロだと少々厳しい。クルマのメカニズムに関する知識のある方、大学や高専などの自動車部員などが向いている。
ピットグリッド委員は、ピットロードでの活動がメインとなる。多い時は、SUPER GTのように40台を超える車両が出入りするピットロードが舞台なので、危険も伴う。レース前後のグリッドでの進行管理や監視を行うのが役目で、スタート時のフライングのチェックなどもピットグリッド委員が担当している。
パドック委員は、パドック整理と安全監視が担当。立ち入り制限エリアの通行規制や、大勢の観客を誘導する交通整理などを行う。観客と接する機会の多い部署のため、対応の仕方にも非常に気を遣わなくてはならない。
救急委員は、アクシデント発生時にドライバーの救出などを行うオフィシャル。消防士や救急救命士などのレスキュー関係、ドクターや看護師などの医療従事者といった、専門職の方が多く、資格も何もない一般の人では担当するのは少し難しいセクションだ。逆に、レスキュー関係や医療従事者の方には、大いにチャンスがあるといえる。
最後は事務局。オフィシャルを支える裏方の裏方ともいうべきポジションだ。参加するオフィシャルの世話や大会の進行に関連する事務一般を担当する。大会組織委員の手足となって各種サポートも行い、レース参加者とオーガナイザーの橋渡しなども務める。