CPUメーカーは製品の性能を示しやすいハイエンド製品をアピールしがちだが、グロスマージンの見通しを分析すると2010年はメインストリーム・クライアントとバリュー・クライアントで全体の82%になる。ユーザーカテゴリー別では、コンシューマと中小ビジネス (SMB)で74%だ。このような利益を最大化できるカテゴリに焦点を絞るのが今後の戦略の一つになる。ただしメインストリーム/ バリュー・クライアントといっても、地域によってパソコンの使い方が異なる。米国ではゲームが盛んだが、欧州ではそれほどでもなく写真関連の作業が好まれる。中国では、米国や欧州よりもパソコンで音楽を聞いたり、ビデオを編集するユーザーが多い。ターゲットを絞りながらも、このようなユーザーの分布に対応できるバランスの取れたプラットフォーム(Balanced platform)が求められるとコンピューティングソリューション・グループのシニアバイスプレジデントRandy Allen氏。ここにCPUとGPUの相乗効果を引き出せるAMDの長所が生きる。またビジネス、家庭、エンターテインメントのいずれのユーザーにも共通しているのが、モバイルへの関心の高さだという。
このような分析を踏まえ、ユーザーにフォーカスするという点から、クライアントでは最初に2009年のプラットフォームが紹介された。今後の共通の強化点として挙げられたモバイルは、09年前半にミニノート/ ウルトラポータブル向けに「Yukon」を用意する。TDPは25W以下。従来よりもスリムな設計を可能にするという。いわゆるネットブック (Netbook)もカバーするが、PCの利用体験を得られるのが大きなポイントになる。ネットブック市場ではIntelのAtomが市場を形成しているが、性能的な制限を感じているPCユーザーは多い。そこにすき間があるとAllen氏。さらに09年後半にHDビデオやゲームをモバイルで楽しむメインストリーム向けノートPCプラットフォーム「Tigris」を投入する。また同時期に、DASHマネージメントサービスを備えたビジネス向けデスクトップ・プラットフォーム「Kodiak」、CPU/ GPUのバランスを活かしたコンシューマ向けデスクトップ・プラットフォーム「Pisces」が登場する。注力市場に45nm世代の製品が揃う09年後半はAMDの勝負の時期になりそうだ。このほか今年第4四半期にホームシアターPC用プラットフォーム「Maui」、09年第1四半期にハイエンド向け「Dragon」が計画されている。
09年のCPUは、ミニノート/ウルトラポータブル向けに「Conesus」(09年前半、2コア)「Geneva」(09年後半、2コア、DDR3)、メインストリーム・ノートPC向けが「Caspian」(09年前半、2コア)「Champlain」(09年後半、4コア、DDR3)。メインストリームデスクトップが「Propos」(4コア、DDR2/3)、ハイエンドデスクトップが「Deneb」(4コア、DDR2/3)となっている。
さらに2011年には32nmに移行、マイクロアーキテクチャが刷新され、ハイエンド向けに初のBulldozerコアとなる「Orochi」、メインストリーム向けに「Liano」、さらにミニノート/ウルトラポータブル向けに初のBobcatコアとなる「Ontario」が登場する。